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【中国・四国ブロック】
自分の歴史を味方に付ける~どんな経験もきっと未来に生かせる~(2020年6月10日掲載) 音声読み上げ


呉工業高等専門学校 講師 小倉 亜紗美


私は呉工業高等専門学校(以下、高専)で働く研究者であり、今年で3歳になる息子を育てる母親でもあります。

息子が1歳の時に飛行機を見に行った時の写真

前職の広島大学平和センターの任期付き助教(2014年4月~2019年3月)のときに、結婚・妊娠・出産をして母になりました。私が当たり前のように出産後も働き続けようと思えたのは、夫婦共に研究者をしながら子育てをされていた大学院生の時の指導教員の中坪孝之先生の影響が大きいと思います。私が修士論文や博士論文を書いているとき、私の隣には学童保育を終えてお父さんのところにやってきた先生の息子さんがいました。子育てをしながら働くためには、時間の管理が重要であること、真面目な人ほど時間をかけて完璧を目指そうとするけれど、その方法は子育てをしながら両立させることは難しく、それで仕事を諦めてしまう人が多いため、仕事の進め方を工夫する必要があることなど、研究の方法のみでなく研究者を続けるために重要なことをたくさん教えて頂きました。

私が出産をしたのは2017年7月で5年の任期付き(再任なし)の仕事の4年目でした。妊娠が分かったときに最初に調べたことは、育児休業(以下、育休)の制度や手続きのことでした。当時の職場の規定で、「育休期間終了後引き続き1年以上雇用されることが見込まれる者」が育休を取得する条件だと分かったので、任期が切れる1年前の2018年4月1日(子供が0歳8ヶ月の時)に育休から復帰しました。そこから私の母親と研究者を両立する生活が始まりました。仕事に復帰してからは、保育園のお迎えの時間の19時に絶対遅れることが出来ないので、大学職員の夫と二人で調整しながら仕事と子育てをしています。でも、子供が病気になったときは保育園で預かってもらう事も出来ず、しかも子供が私から離れなくなるので、出来るだけ仕事を休んで子供の側にいるようにしていますが、どうしても休めないときには、兵庫県に住む両親に広島の自宅に来てもらう事もあります。出張に行くときも、夜中に子供が必ず目覚めてお母さんが居ないと号泣してしまうので、夫か両親に一緒に出張先に来てもらっています。出産後に初めて学会発表に行ったときには、研究者の世界に戻って来られたのだと感動しました。この出張の付き添いは、リタイア後の両親にとっては孫と一緒に旅行に行って楽しかったという思い出作りになり、思わぬところで親孝行が出来ました。

私は学位取得後、非研究職(留学・留学生支援の仕事)に5年間就いていたので、他の同年代の研究者に比べて業績が少ない上に、環境保全の研究をして学位を取得したのに、非研究職の仕事を経て、研究職に復帰した際には平和センターという全く違う分野になっていました。そこで前から興味のあったフェアトレードの研究を始めたのですが、妊娠・出産もあり思ったほどには成果をあげられないまま職探しをすることになりました。育休から復帰後1年で任期が切れるので、産休・育休中も就職活動も続けました。この時の私の仕事探しの条件は、①自分の能力で出来る仕事、②(夫婦揃って子育てしたかった為)夫の職場とも近い今の家から通勤出来る場所であることでした。育休から復帰後、運よくこの2つの条件を満たす現在の職場に採用してもらったのですが、これによって私は「自分の歴史を味方に付ける」ことが出来ました。実は私は和歌山高専の機械工学科の卒業生なので、現在の職場に来たことで、環境保全や国際交流、平和構築に工学がどのような貢献が出来るかを学生に伝えるという、今までの経験を全て生かした仕事が出来るようになりました。

私の経歴は決してスマートではないけれど、色んな経験をしたからこそ出来ることが増えたとも感じています。今は子育てを経験したからこそ見えてきた、近年増加している日本に住む外国人の子供の支援についての研究にも取り組んでいます。どんな経験もきっと未来に生かせると信じています。


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