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世界経済フォーラムがポストコロナの職場における「ダイバーシティ、平等、インクルージョン 4.0ツールキット」を2020年6月に発表。(2020年11月17日掲載) 音声読み上げ


全国ダイバーシティネットワーク事業コーディネーター/株式会社カレイディスト エグゼクティブアドバイザー 二木 桂子


世界経済フォーラム(World Economic Forum)は1971年に非営利財団として設立された、スイスのジュネーブに本部を置き、特定の利害と結びつくことのない、独立した公正な組織です。世界経済フォーラムは官民両セクターの協力を通じて世界情勢の改善に取り組む国際機関です。

以下「ダイバーシティ、平等、インクルージョン 4.0ツールキット」を紹介します。

この10年、第四次産業革命のもと技術革新により様々な働き方が可能となる一方で、パンデミックの蔓延により、物理的な働き方以上に鍵を握るのは、職場におけるダイバーシティ、平等、インクルージョンを目指すための、総合的なアプローチです。企業は新しいテクノロジーを活用し、安全でより開かれたインクルーシブな職場環境をつくる必要があります。このツールキットは、ダイバーシティ、平等、インクルージョンの意義及び組織風土を変えるための戦略とアクションを解説しています。

ダイバーシティ、平等、インクルージョン4.0(定義)
多様性のある組織の労働力は、基本的に組織が活動する地域の人口とその顧客ベースを代表すべきです。多様性とは、先天的なもの(生まれつきのもの)であれ、後天的なもの(経験によるもの)であれ、人間の違いやバリエーションの範囲を表しています。その内容として、

  • 年齢と世代
  • ジェンダーと性自認
  • 性的指向
  • 精神的・身体的能力
  • 健康レベル
  • 性格的特徴と行動
  • 人種・民族・宗教
  • 言語と国籍
  • 所在地(郊外や都市部など)
  • 社会的起源と親の背景
  • 収入・教育・社会的地位
  • 外観

から構成されると定義されています。
インクルージョン(包摂)を生み出す組織では、すべての構成員が歓迎され、大切にされ、尊重されていると感じられます。昇進の機会、良好な労働条件、公正な賃金を平等に得ることができます。インクルーシブ(包摂的)な組織の従業員は、強い帰属意識を持ち、エンパワー(権限を与えられ成長を後押し)され、自由に発言ができ、個性が尊重され、成長することができます。

ダイバーシティ、平等、インクルージョン4.0の必然性

  1. 道徳的必然性(Moral Imperative)
    すべての人に平等な機会を与え、公正かつ公平な条件で働く機会を与えることは、道徳的に正しいことです。
  2. 法的必然性(Legal Imperative)
    国際労働機関(ILO)は、仕事のあらゆる面から差別をなくすために、さまざまな条約を採択しています。多国籍組織は、異なる法的環境で活動する際、異なる場所の従業員に与えられる権利と権限を考慮する必要があります。
  3. 経済的必然性(Economic Imperative)
    ダイバーシティ、平等、インクルージョンの競争上の優位性を十分に享受するためには、管理者、従業員、組織全体による初期の学習努力が必要ですが、様々な調査によると、正しく管理された多様性のあるチームは、管理の行き届いた同質性の高いチームより、時間の経過とともにチームの業績が著しく上回ることが明らかになっています。

正しく管理された多様性のあるチームは、同質のチームより

  • 利益率: 25%-36%、より利益を上げやすい¹
  • イノベーション: 最大20%、革新を生む確率が高く、約19%、革新による収益が高い²
  • 意識決定: 最大30%、ビジネスリスクを発見し軽減できる能力が高まる³

と言われています。

ダイバーシティ、平等、インクルージョン4.0の戦略
不確実性と混乱を乗り越えるためにはCEO等最高経営幹部の強力なリーダーシップと組織力がビジネスの成功に不可欠です。適切な戦略は、組織全体の生産性、イノベーション、レジリエンス(回復力)を高めることができます。
このような戦略は、全ての組織構成員(従業員)の経験、目的、帰属意識に焦点を当て、ダイバーシティ、平等、インクルージョン(包摂性)を組織の中核的な強みとして活用することを目的とした、新しいテクノロジーの活用と人間を主体とした新しいアプローチを組み合わせた総合的な戦略が重要だと述べられています。具体的には以下の通りです。

  1. 組織全体としての取り組みが必須だと提唱しています。
    ダイバーシティ、平等、インクルージョンを達成するためには、組織の最高経営幹部自ら旗振り役となり範を示しつつ、組織全体の取り組みとして全ての構成員の意識と行動の変革を起こす必要があります。
  2. 積極的かつ効果的なテクノロジー(AIも含む)の活用が必然であると提言しています。
    • テクノロジーの課題として、使用のされ方によってはより偏見を助長し、排他的要素をテクノロジー自体が形成してしまう恐れがあることを認識する必要があります。
    • 正しくテクノロジーソリューションを活用できれば、今までは想像もできなかったような規模やスピードで機会創出が可能となります。

今後実践すべきアクション

  1. 採用と選抜
    • 募集要項における表現にバイアスがないか注意を払うようにしましょう
    • 募集方法を多様化することにより、今まで以上にダイバースな候補者獲得を目指しましょう
    • 候補者は実績とスキルで選定しましょう
  2. 組織の分析及びモニタリング
    • KPI(業績指標)を設定し、組織内でのベンチマーキングを実践しましょう
    • エクスクルージョン(排除)を生み出す行動を測定しましょう
    • 組織構成員(従業員)のエンゲージメントを測定しましょう
  3. 組織構成員(従業員)の育成、報酬とモチベーション向上
    • トレーニングの実施やインセンティブを整備し、日々のインクルーシブな行動と帰属意識を高めるための工夫をしましょう
    • 客観的なパフォーマンスレビューを実践しましょう
    • キャリアプランニングと共に育成計画を作成しモチベーションを向上しましょう

各アクションを実践する上で活用可能なテクノロジープロバイダーも紹介されています。

ダイバーシティ、平等、インクルージョン4.0を実施する上での積極的な新技術の管理
新たなテクノロジーはこれまでにない偏見を形成する恐れがあるので実証されていないソリューションを導入することについて警告もしています。しかしこれらの偏見は(システム上)修正が可能であり、テクノロジーの活用はこれまで以上に潜在能力を引き出す可能性を秘めていると、論じられています。

以上

世界経済フォーラムが発表したプレスリリース「 ダイバーシティ、平等、インクルージョンの向上をめざすリーダー向けツールキット」においてサーディア・ザヒディ氏(世界経済フォーラム、取締役)は以下のように述べています:
「成功する組織は、従業員の多様な意見、スキルセット、人生経験によって支えられています。人種的公正、ジェンダー・パリティ(平等)、障がいのインクルージョン、LGBTIの平等、あらゆる形態の多様性におけるインクルージョン、これらを保証することが、新型コロナウイルス感染拡大の危機から立ち上がろうとしている職場において「新たな日常」である必要があり、短時間でこれを現実のものとするために、テクノロジーを活用できることは明らかです」


今回紹介した
「ダイバーシティ、平等、インクルージョン 4.0ツールキット」へのリンク:
http://www3.weforum.org/docs/WEF_NES_DEI4.0_Toolkit_2020.pdf 
日本語プレスリリース:
https://jp.weforum.org/press/2020/06/diversity-and-inclusion-toolkit/

  1. McKinsey & Company, Diversity Wins: How inclusion matters, 2020
  2. Deloitte, Diversity and Inclusion Revolution: Eight Powerful Truths, 2018、Rocio Lorenzo and Martin Reeves, “How And Where Diversity Drives Financial Performance,” Harvard Business Review, 2018, https://hbr.org/2018/01/how-and-where-diversity-drives-financialperformance.
  3. Deloitte, Diversity and Inclusion Revolution: Eight Powerful Truths, 2018


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