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【30% Club Japan TOPIX社長会メンバーからのメッセージ】株式会社資生堂 井上 美香氏(2020年10月30日掲載) 音声読み上げ


2010年に英国で発足し、日本では2019年に設立された30% Club Japan。現在は50を超える企業、教育機関等のトップがメンバーになっており、中でもTOPIX企業のトップからなるTOPIX社長会は、30% Club Japanの中でも精力的に活動を行っています。2020年7月より、30% Club JapanのTOPIX社長会メンバー企業のお話を連載シリーズでご紹介しています。今回はその第3回目です。

連載シリーズ①はこちら
連載シリーズ②はこちら


連載シリーズ③
株式会社資生堂 井上 美香氏
「潜在力を引き出す女性のエンパワーメント」

株式会社資生堂より、執行役員 チーフレギュラトリーオフィサー GIC改革リード 担当領域:技術知財、GIC統括、グローバル薬務、化粧情報イノベーションの井上美香さんをお迎えして行った対談の模様を、ダイジェストでお伝えします。

(聞き手は、全国ダイバーシティネットワーク事業コーディネータ/ 株式会社カレイディスト代表取締役 塚原月子。)

井上さんご自身のキャリアの歩み

外資系でのキャリアが長く、ダイバーシティのある環境で仕事してきましたが、大きなターニングポイントが2回ほどありました。

1回目は、フランスに転勤した際のこと。大変でしたが学びも多くありました。ネイティブではなく細かいニュアンスまではわかりません。そんな時に、最後は信頼関係が構築されていることが重要だと感じました。全てビジネスライクに片づけるのではなく、ユーモアも交えることでその場が和みます。コーヒー一杯でも一緒に飲む関係になっておくといったことで、スキルや知識だけではどうにもならないことも超えられるような面があります。

2回目は、帰国してから約200名をリードする研究所の所長になった際のこと。それまでは、自分で抱え込む傾向がありましたが、とても抱え込みきれないことがわかり、これは誰に任せよう、ここは誰に力を貸してもらおうということができるようになりました。

若い時分には、自分よりできる人から学びたいと思っていました。でも、自分が辛いときに手を差し伸べてくれる人は上司や仕事が出来る人だけではないことがわかり、自分の価値観が変わりました。できる人だけが偉いのではない、いろいろな人に支えられていると感じるようになったのです。もちろん部下から学ぶこともたくさんあります。

資生堂におけるダイバーシティ&インクルージョン

2016年に、外資系企業から資生堂に入社する際、カルチャーショックを受けるだろうと覚悟を決めていましたが、拒絶されることなく受け入れて頂きました。資生堂がどんどんグローバルになっていこうという時期だったこともあるかもしれません。

入社後によく聞かれたことが、「資生堂の変なところを教えて下さい」ということ。外の世界を知らないという自覚があって、外の視点も持った人から学びたい、成長したいという意欲を感じました。

資生堂は、外資ではないし「典型的な日本の企業」でもない存在だと思います。女性がどんどん上の職位に就いたり、英語が公用語になるなど、社員にとって新しい驚きが常にあります。こうした変化には、経営層の意思も働いていますが、必要に迫られているということもあります。資生堂は、ビジネスの半分以上が海外です。傘下にあるブランドも海外のものが多く、海外のヘッドも殆どノンジャパニーズになっています。

女性のキャリア形成

30%クラブでの活動、女性のエンパワーメントは、ビジネスと無関係に行っているのではなく、むしろビジネスに直結するものです。女性が輝き豊かな人生を送って頂けるようにするというのが資生堂のビジネスです。それは、組織の中の女性も自己実現できてこそです。

資生堂の中でも、部門によって女性の割合は様々です。女性がほどよくいる部門は、活気があり雰囲気が良いですね。地球上の女性は30%ではなく50%ですから、それが自然なハーモニー。逆に女性が多いところに男性が入ることによって、雰囲気がずいぶん良くなるということもあります。

研究所では、男女の比率はほぼ半々ですが、管理職層には女性がまだまだ少ないです。女性の中には、自分はワークライフバランスを優先したいとか、出世欲がないと言う人もいますが、背中を押してみると変わることも多いです。ロールモデルがいなかったり、上に立つことがとても大変な戦いであるというような固定観念があったりして、自分で線を引いてしまっているということもあるようです。

背中を押すということですが、私は自分の体験談を話すことが多いです。何がきっかけでマネージャーをやることになったか、実際にやってみたらどうだったか。責任が大きく大変なこともありますが、良いことがたくさんあって楽しいということを伝えています。

私自身も上司から背中を押してもらいました。あなたなら絶対できると言ってもらいました。ちゃんと見てているよ、何かあったら助けてあげるとよ言ってもらって。人にできると信じてもらえると、勇気が湧いてきますよね。

上司の方は、部下を信じることが大切です。今はできていなくても、今だけ切り取って見るのではなく、どう成長してもらうのかを考えてサポートしていただきたいと思います。

管理職の中には、部下の育成に悩んでいる人も多いです。厳しいフィードバックをすることが難しかったり、叱ってばかりだったり。上司から部下へのコミュニケーションは、TeachingではなくCoachingが重要だと思います。

私が研究所の風土改革を担当してから、研究所の管理職全員にCoaching研修を受けてもらいました。目から鱗の発見があったとか、もっと早く受けたかったという声がありました。つい答えを言ってしまう管理職の人が多いですね。すぐに答えを言うのではなく、「あなたはどうしたいの?」と聞くことが大切です。補助輪を外して運転させてみて、転びそうになったら助けてあげるということで良いのです。

コロナ禍における次世代女性へのメッセージ

今は世界中が大きくシフトする時期。馬車が車になるくらいのシフトだと思います。変化はチャンス、前例は無視して良い。次世代の皆さんはいろいろなことの第一号になると思います。

私たちはつい、今ある制約の中で何ができるかと考えがちですが、一切の制約がなかったら何をしたいのかということを考えてほしいです。組織の中でも、時間がないとか予算がないといった話になりがちなので、では、時間も予算もたっぷりあげたらどうしたいの?と聞いてみると、意外と考えが出てこないんです。だから、まずは制約を抜きにしてしっかり考えて、そこから現実的な制約を入れていく方が良いと思います。

妄想するのはただです。私はこんな未来が欲しいということを妄想したら、言語化して人に語るべきです。言語化しなければ何も動きませんが、人に語ることで、描いた未来を応援してくれる人が現れます。

キャリアを歩む上では、運や縁といったものも大事です。偶然出会った何かに乗るも乗らないも自由、そして最終的な責任を自分で取るというということだと思います。


井上美香さんご経歴:
2016年 株式会社資生堂に入社
2017年 グローバルイノベーションセンター 化粧情報開発センター長
2018年 グローバルイノベーションセンター
    研究開発副本部長 兼 化粧情報開発センター長
2020年 執行役員
    チーフレギュラトリーオフィサー
    GIC改革リード
    担当領域:技術知財、GIC 統括、グローバル薬務、化粧情報イノベーション