【30% Club Japan TOPIX社長会メンバーからのメッセージ】りそなホールディングス 島田 律子氏(2020年8月28日掲載) 音声読み上げ
2010年に英国で発足し、日本では2019年に設立された30% Club Japan。現在は50を超える企業、教育機関等のトップがメンバーになっており、中でもTOPIX企業のトップからなるTOPIX社長会は、30% Club Japanの中でも精力的に活動を行っています。先月より、30% Club JapanのTOPIX社長会メンバー企業のお話を連載シリーズでご紹介しています。今回はその第2回目です。
連載シリーズ①はこちら
連載シリーズ②
りそなホールディングス 島田 律子氏
「組織成長の原動力としてのダイバーシティ」
りそなホールディングスより、ダイバーシティ推進室長の島田律子さんをお迎えして行った対談の模様を、ダイジェストでお伝えします。
(聞き手は、全国ダイバーシティネットワーク事業コーディネータ/ 株式会社カレイディスト代表取締役 塚原月子。)
島田さんご自身のキャリアの歩み
りそなには、中途採用で入社しました。当時は、銀行も投資信託を扱うようになった時期で、個人分野を中心に営業推進を担当していました。
まだ、本部マネージャー層に女性が少なかったのですが、直属の上司が、男女関係なく早めにチャレンジした方が良いという考え方で、マネージャーへの推薦をしてくれたのです。1、2回目のチャレンジでは、まだもう少しと言われましたが、ここで心折れてはいられないと思い、3回目のチャレンジで本部マネージャーに昇格することができました。
周囲には男性が多かったのですが、仕事上のモチベーションが高ければ男女にかかわらず積極的にキャリアを築くべきという考え方の人たちが多かったので、女性にありがちな「自信のなさ」を感じることなくチャレンジできました。私自身、常に「今より1つ上のポジションだったらこう判断するだろう」という視点を持つよう意識して仕事をしていましたが、それも周囲の影響を受けてのことでした。
その後、システム部門に異動しましたが、これも自分の希望で社内FA制度を活用しました。非対面チャネルの中心であったインターネットバンキングについてもっと深く知りたいと思ったのです。自分で手を挙げたこともあり、できる限り極めたいと思って、6年やってきました。
直近の人事部門への異動は、人をマネジメントするという経営職層へのチャレンジの機会を与えられたと感じています。
ライン管理職(※)における女性比率が30%超となった取組みとは?
一朝一夕ではありませんでしたが、女性自身の意識改革、男性についても当事者としての意識改革、そして組織全体の風土改革がベースにあったと考えています。
2003年のいわゆるりそなショックの際、多くの男性社員が退職をしました。すると、それまでは男性優位であったかもしれませんが、残る人を総動員して、組織を立て直すための高いハードルを越えなければいけないということになったのです。そのため、誰の意見であっても良いものであれば真摯に耳を傾ける、銀行の常識と思われていたことでも、お客様目線で非合理的である物事は見直す、といったことを敢行していきました。従来意見を出しづらかった女性社員やパートナー社員(パートタイマー)が、お客様に最も近い接点であったわけで、現場社員や女性の活躍が不可欠という意識が組織全体に広がりました。
さらに女性の声を経営に直接反映させる仕組みを構築するため、2005年に経営直轄の諮問機関「りそなWomen’s Council」が立ち上げられ、そこからの提言のほとんどが実現されてきました。メンタリング制度や職種転換制度の導入などもその一部です。
メンタリング制度は、一定の職階以上の女性に対して指名制で行い、メンティーの希望を聞きながらメンターとのマッチングを行いますが、少しずつ成果を上げてきていると思います。「多様なリーダーシップの形が学べた」、「仕事をする上での視座を上げるのに役に立つ」などのフィードバックを得ています。
もう一つ、特徴ある取組みの一つに「スマート社員」というものがあります。スマート社員には、ライフイベントにより時間制約が発生している場合に一時的にスマート社員に転換することで勤務時間を限定して働ける勤務時間限定型、パートナー社員から正社員への登用のステップとして業務範囲を限定したスマート社員へ登用される業務範囲限定型の2種類があります。スマート社員にはもちろん昇級昇格もあり、女性がキャリアアップしながら長く働き続けることができる仕組みとなっています。
※「ライン管理職」:部下のいる管理職
30% Clubへの参画・活動意義について
これまでの取組みの結果、ライン管理職の女性比率は高まりましたが、次なる課題は、経営職層における女性比率の向上だと考えています。経営職階における女性比率は、現在は10%に満たない状況ですが、30% Clubでの活動等を通じて、更に次のステップへ行くのだということを、社内外に明確に意思表示していくことが重要だと感じています。30% Clubでは、多様な業種の企業その他組織が協働していくことで、自社や業界の常識に留まらない刺激を受けながら、女性のキャリアデザインに新しい考え方を取り入れていくことができればと期待しています。
コロナ禍における研究活動、次世代女性へのメッセージ
コロナの影響で、「研究が全然できない」「方向性は決めたがその通りのことができない」などと嘆く声も聞こえてきます。しかし、自分の研究対象とは一見縁遠いと思われることも含めて、身近な社会の事象やその変化に目を向けて、ある課題に対して自分だったらどう乗り越えるか、自分のやっていることと身近な社会事象はどう結びつくのか、考察をすることは、今できることであり、今後につながることでもあると思います。
りそなグループには、「自ら気づき、考え、行動する」という行動指針があります。SNS等であふれかえった情報に左右されるのではなく、地に足の着いた情報に基づいて、自分で考えて行動することのできる人材はりそなグループに限らず求められていると思います。企業の立場としては、全国ダイバーシティネットワークのように地域ブロックごとの地域特性も踏まえた活動から、今後も様々な実態に基づく意見・考え方を発信して頂けることを期待しています。
島田律子さんご経歴:
1998年 旧あさひ銀行(現 埼玉りそな銀行)入社・営業店配属
2000年 個人事業第一部へ異動
2008年 マネージャー昇格
2014年 りそなホールディングスIT企画部へ異動
2019年 グループリーダー昇格
2020年 りそなホールディングスダイバーシティ推進室へ異動・室長昇格