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【関東・甲信越ブロック】ただの数字ではない、0、3、5、9(2022年2月28日掲載) 音声読み上げ


長岡技術科学大学 工学部 物質材料工学専攻 准教授 高橋 由紀子

3人の子供を平日はほぼ一人で見てきた手前、大変さや社会の障壁、周囲の目線、アンコンシャス・バイアス等色々感じてはきましたが、多くの方々のご尽力で大幅に改善していますので、ここでは私的に感じた利点を中心に書きたいと思います。幼少期に否定されずに育てられたためか、この点は両親、祖父母含め周囲の方々に感謝しておりますが、いかなる時でもなんとかなる、なんとかしようと思える性格がまずは下地にあります。

東北大学で博士課程を出て学振PDのときに結婚し、産業技術総合研究所でポスドクとしてお世話になっていたときに第1子、第2子を授かりました。旦那と同居していましたがそれなりに大変で、子どもの誘惑も強く、研究一辺倒というわけにはいきませんでした。ただ、工学をやっている者の信条として、工学・技術は人の幸福と福祉のためにある=自分も家族も幸せでないと意味がない=滅私奉公型の研究のやり方はしない と思っていました。そこでひらめいたのが、9時―5時(17時)でできる研究を自分で創ろう でした。要するにライフの制約からワークを開発しバランスをとる発想でした。その制約は一般の研究者から見ると不利で不憫に思えるようですが、これまでの当たり前から離れることができ、専門にとらわれずに独自性を持ち、生き残るための最善の戦略であることに気が付きました。アイディアが必要な場合はまず境界条件を認識することが大事で、そこからの可能性を考えることで具現化できることも学ぶことができました。

家事や子育てが得意ではないというのが本音だったと思いますが、仕事を続けようと粘りました。そのためいろいろな人から情報収集、また人づてにも聞いて歩きました。そうするうちに子育てのプロの方々にお会いでき、直接人生を教わりました。保育園は4月からが基本で、それまでの間長男を預かって頂いた元保育園の園長先生からは、赤ちゃん一般のことに加えて、働くことと子育ての両立の意味を教わりました。その中でも最も印象的な言葉、「協力するから、絶対に辞めないで、続けてください」その意味は、「周りの助けを借りてもいいので、長い間仕事から離れてはいけない」でした。とにかく0 (ゼロ)にしないこと、どんなに忙しい時でもほんのちょっとでも考えることが大事で、ある一定期間ゼロにしてしまうと回復は難しいと解釈しました。育児休暇は極力少なく抑え、出産日前後も0.1 %でも考えるようになり、体の自由はききませんが思考はある程度自由ですので、研究と日常、社会など絡めていろいろなことを考えていました。それを書ける時にノートに書き出してみたり、眺めてみたりしていました。

現在の大学にお世話になってから、旦那との別居生活となりましたが、そこで第3子ができここからが本番でした。あまりの状態でしたので、負担軽減に子どもたちを旦那と私で分けようとしたことがあります。そんなことを保育園で話していると園長先生に、「お母さん子どもたちを絶対に分けてはいけない」と強く説得されました。ご自身も多忙が故に3人兄弟を幼い時に分けて育ててしまい大人になってからお互いに協力しないとのこと。また旦那からも分けたらなかなか会えないと言われ、仕方なく私一人で頑張りましたが、これでなにかあったら化けてでてやるーくらいにふてくされていました。ただ、子どもたちも小学校に入りますと、困った時は3人で一致団結して難局を乗り切っていましたし、考えて私を助けてくれたこともしばしばで、3人でまさに社会ができていました。3人よれば文殊の知恵で、これに感動し、チームワークは3人となるように心がけています。

最盛期の写真

ワンオペのまさにくじ引きのような危機的な毎日でしたが、子供たちが持ち込む虫、小動物、フリースタイルの絵や作品、事件等々、とてもクリエイティブで刺激を浴び続けることができました。変わっていくことが生きること、それが当たり前と教えてくれますので、固くなりがちな自分の思考を校正することができます。それと同義なのですが、変化にためらいがなく、アイディアを生むことが日常化します、そのあたりも大きな利点ではと思っています。

散文となりましたが、ご笑覧いただけましたら幸いです。名誉のために。旦那は家事は何でもでき協力的で子どもたちはいつも料理を楽しみにしています。私の研究内容は、有機色素ナノ材料の機能化で環境を支える技術を目指しており、これから時間と構造、情報を組み入れていこうと考えています。


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