【東海・北陸ブロック】日本も捨てたもんじゃない:高等教育におけるワークライフバランス ギブ・アンド・テイク(2023年3月6日掲載) 音声読み上げ
金沢大学融合研究域 融合科学系 准教授 ダガン さがの
私は金沢市で生まれ、10代の頃にニュージーランド(NZ)に渡航しました。高校・大学・大学院とNZでの教育を受けたのち、ワイカト大学経営学部で長年に渡り外国人留学生に教育を行ってきました。2014年に帰国し、2015年より金沢大学外国語教育センター(2016年より名称変更:国際基幹教育院外国語教育系)で専門である第二言語習得学・英語学の教育と研究を行い、現在は金沢大学融合研究域融合科学系で教育・研究をしています。研究は主に「高等教育における英語学習者オートノミー能力と英語力の向上」について授業外学習に注目し文理融合の様々な視点から教授法や学習法などを調べています。
20代後半で結婚しましたが、なかなか子供には恵まれませんでした。そもそも意思疎通が上手くとれない赤ちゃんが苦手だったことと、30代半ばまでは仕事も楽しくやりがいがあったのもあり、あまり気にもせず過ごしておりました。しかし、35歳を過ぎてから少しずつ「こども」を意識するようになり、いずれ後悔しないようにと色々な治療を行いました。残念ながらそれでも子供は授からずストレスだけが溜まっていき、40歳の誕生日を迎えた際、子供は諦め大学教員としてキャリア1本に集中することを決断しました。ちょうどその頃、金沢大学でお仕事をさせていただくご縁をいただき、新しい職場でこれからの人生、主人と二人で頑張っていくぞ、と思っておりました。今から振り返ると「子供を持つ」というストレスから解放され、かつ日本での生活及び職場の環境も変わったのもあったのか、子供を授かり42歳の時に出産いたしました。
妊娠した際は正直戸惑いました。なぜなら、World Economic Forumが発表するジェンダーギャップ指数において常に世界ランキング上位(現在4位)をキープしており男女共同参画の理解や認識がかなり高いNZとは違い、残念ながら世界ランキング下位である日本(現在116位)において、妊娠・産休・育休のシステム及び職場でのワークライフバランスにおける同僚の理解・認識等が得られるのか分からなかったからです。しかしながら、職場に妊娠のご報告をさせていただいた際、非常に喜んでいただき、つわりがひどかった時などは業務を減免・免除・代替してくださったりと沢山の同僚が協力してくれました。一番驚いたのが、同僚全員でベビーシャワーサプライズパーティーを開催してくださったことです。思わず嬉し泣きしてしまいましたが、金沢大学に来て本当によかったと思いました。さらに、妊娠中及び育休明けも研究パートナー支援制度が受けられるということも教えてくださり、金沢大学ダイバーシティ推進機構 男女共同参画推進ユニットにご連絡した際、とても丁寧な分かりやすい説明での手厚い対応とともに、即時サポートをしていただきました。
1年間の育休明けより、娘は保育園に通い初め、最初の2年間は風邪や病気が続き、月の半分は保育園をお休みするという事態になりましたが、夫、祖父母、同僚の協力を得ながら講義に穴を開けることなく過ごせました。研究面においては、研究パートナー制度で6年間支援していただきました。その間、研究パートナーの方にデータ収集のまとめ、分析、文献収集などお手伝いしていただきました。そのおかげで論文の数は少しずつ増えていき、学内の共同研究支援助成金など獲得後、2年前より科研費や学外研究助成金に採択され仕事と育児のバランスがうまく取れていると感じております。
最後になりますが、帰国してからニュースなどで「産休・育休を取られると仕事に『しわ寄せ』がくる」や「子供がいない夫婦は産休・育休が取れないため不公平だ」などの声を聞いたことがあります。これらを考えると、実際私自身も産休前から同僚達に負担をかけていたかと思います。しかしながら、その同僚達が男女問わず、産休・育休を取ったり、病気になったり、親の介護をしないといけなくなったりと、この6年間何度かありましたし、今後もあるかと思います。そのような際には恩返しではないですが、いつでも協力したいと考えております。