東京農工大学
理系女性研究者の活躍に向けて 東京農工大学における女性研究者支援の取組 音声読み上げなし
掲載日:2022/03/04
はじめに
東京農工大学は農学と工学からなる理系国立大学であり、第3期中期目標のビジョンとして「世界が認知する研究大学へ」を掲げ、世界に貢献する科学技術系大学を目標に教育・研究・人材養成・国際活動に取組んでいます。女性研究者支援の関連事業については、平成18年度(2006年度)から平成27年度(2015年度)に至るまで、女性研究者支援モデル育成事業、女性研究者養成システム改革加速事業、女性研究者研究活動支援事業(拠点型)を実施してまいりました。平成28年度(2016年度)ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)「女性研究者の活躍推進を実現する“関東プラットフォーム”の創生と全国展開」では、共同実施機関の東京外国語大学、国際農林水産業研究センター、首都圏産業活性化協会と連携してネットワークを関東から全国へと拡大し、女性研究者支援に関わる取組の情報共有等を介して機関間の交流を図っています。
女性研究者支援の取組:出産・育児・介護支援システム
出産・育児・介護期にある女性研究者の研究停滞を防ぐことを目的とし、女性研究者(女性教員、博士研究員、博士後期課程大学院生)を対象に研究支援員を週1~2回派遣する学内研究サポートシステムを実施しています。また、修士および博士学生によるRA研究支援員が、先輩女性研究者を支援する取組を現在試行中です。この取組は、支援される側と支援する側の共育効果を狙ったもので、次世代の女性研究者に多様性を享受する環境について実学してもらう機会を提供しています。さらに、本学では産休取得期間にある常勤教員に対して専任の支援員としてポスドクを大学経費にて雇用し、6カ月を上限に配置する“産休ポスドク制度”を実施してきました。
2020年度からは、産休ポスドク制度の制度拡充を図り、研究支援員のキャリアパスに配慮し、雇用期間を6カ月から上限1年としました。また、要望の多様化に伴い、産休中の女性教員に代わり講義を担当する“非常勤講師”の雇用を可能とし、非常勤講師および研究支援員双方の雇用、講義や実習の代替教員(学内の教員男女)への研究支援員の配置など、利用者の希望に応じた支援を実施中です。
ポジティブアクション「1プラス1」制度による女性研究者の採用
本学における女性研究者の雇用促進と学内の男女共同参画の推進を目的に、平成21年(2009年)4月より本学独自のポジティブアクション「1プラス1」を実施してきました。この制度は、常勤の教授・准教授・講師・助教に女性を採用した場合、当該専攻等にプラス1名分の特任助教の人件費を学長裁量経費から支給する制度であり、採用した女性教員の職階を基準に毎年度2名の支給対象を決定するという農工大独自の取組です。本制度により女性教員の新規採用を強力に進めて女性教員倍増計画を実現しました。また、現在は、本制度の発展型である“女性幹部登用ポジティブアクション「1プラス1」”(女性教員を幹部補佐等に登用した場合、当該専攻等にプラス1名分の特任助教の人件費を支給)を実施中です。
関東プラットフォームの創生および全国展開による波及的効果
平成28年度(2016年度)ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)「女性研究者の活躍推進を実現する“関東プラットフォーム”の創生と全国展開」の採択を受け、本学では共同実施機関の東京外国語大学、国際農林水産業研究センター、首都圏産業活性化協会と連携して、様々な取組を関東の機関に拡げ、全国展開を目指した取組を行っています。これら連携機関(2機関以上)の女性研究者が主体となり、農学・工学・国際融合分野のグローバルな地球規模の課題解決を目標とする研究内容を主軸に、且つ海外研究者が参画する国際共同研究を実施中です。さらに、シンポジウム、セミナー、多言語ホームページの開設や多言語リーフレットの作成、女性研究者シーズ集の発刊・配布を通して、数多くの機関へ取組み紹介を行ってまいりました。その結果、関東圏の国立大学・私立大学・研究開発法人・企業等にネットワーク機関として参画いただき、“関東プラットフォーム”の形成へとつながりました。その後、北海道から九州まで遠隔地からのネットワーク参画が進み、全国へと拡大展開しています。
平成30年(2018年)、大阪大学を代表機関、本学及び日本アイ・ビー・エム株式会社を協働機関として申請した“平成30年度(2018年度)科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(全国ネットワーク中核機関(群))”が採択され、現在、全国ネットワークの構築を目指した取組を実施中です。これまでに培った東京農工大学ネットワークを全国ダイバーシティネットワーク組織に発展的に融合させることにより、女性研究者の活躍の広域波及効果および相乗効果を図り、全国のネットワーク形成につなげていきたいと考えています。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
問合せ先
東京農工大学 女性未来育成機構