富山大学
科学の魅力を伝えて理工系裾野拡大を目指す富山大学女子学生チーム「スマート・ポリネーター」 音声読み上げなし
掲載日:2023/12/22
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女性研究者比率2割以下という現状からの脱却を目指して
2018年5月1日時点の富山大学における女性教員比率は17.8%であり、女性研究者増加のための取り組みが急務であったことから、将来、研究職に携わる人材の裾野拡大を目的とした富山大学女子学生チーム「スマート・ポリネーター」プログラムを北陸初の取り組みとして立ち上げました。スマート・ポリネーターとは、本学の女性研究者支援を意味するSMART (Support Model for the Advancement of Female Researchers in Toyama)にポリネーター(送粉者)という言葉を組み合わせたものです。「科学の魅力」を花粉にたとえ、花(未来を担う若者)に花粉を届けて結実を促す意味を込めています。
留学生も参加する国際色豊かな部局横断型チームで科学の魅力を発信!
本プログラムでは、学内の女子学生を対象にスマート・ポリネーターの公募を行い、審査を経て学長が任命します。受命者は、自らの研究内容やライフスタイルの紹介を通して理工系女子の裾野拡大を図る活動や、理工系分野で活躍するOGらを招いた講演会・座談会を企画・開催するなど、女性研究者の卵として、学部生や中高生、その保護者に向けて科学の魅力や研究の面白さを伝える次世代育成のための啓発活動を行います。
2020年度から2022年度はコロナ禍において活動を休止していましたが、3年ぶりの再開となる今年度(2023年度)は、理工学教育部、医学薬学教育部に所属する大学院生4名がスマート・ポリネーターに任命されました。
今後は、理工系分野の魅力についての動画やロールモデル集を小・中高生やその保護者それぞれの世代にあった効果的な形で作成し、継続的に情報発信していく予定です。
「知らないから、想像できない」を「なるほど、私もやりたい」に!
中高生やその保護者にとって、理工系分野の女性ロールモデルや女性研究者と交わる機会が少ないことから、進路選択について考える際、理工系分野の学問を学んだ先に何があるのか想像しづらい状況にあります。そのため、理工系科目が好き、または得意であっても、研究職という選択肢があることになかなか気が付くことができません。そこで、理工系分野で活躍中の女性ロールモデルを可視化することを目的として、研究職も含め様々な分野で働く女性を本学に招き、講演会や座談会を行います。今年度(2023年度)開催した「富山大学 ハッピー・キャリア・ミーテイング~薬学分野で活躍中の女性ロールモデルから学ぼう!~」では、本学薬学部出身で薬局に勤務する薬剤師と製薬会社で新薬開発に携わる女性2名を招いた講演会および座談会を開催し、講師と参加者が直接交流できる機会を設けました。
オンライン参加を含み、高校生や本学の学部生・大学院生、保護者、高校教員等、43名の参加があり、日頃の学習を行ううえでの悩みや疑問点、進学後の授業内容や就職後の不安など、普段聞くことができないことを講師からお答えいただきました。座談会後には、理系分野への進学意欲が高まったという声(高校生の参加者から)や、進路指導に生かしたいという声(高校教員の参加者から)があがりました。また、本講演会は、スマート・ポリネーターが中心となって企画から運営までを手掛けたこともあり、ポリネーター自身の企画力、コミュニケーション能力および組織運営能力を涵養する良い機会となりました。
学内での活動をより充実させ、さらに学外へ!
今後は、本学の学部生を対象としたスマート・ポリネーターによる進学相談や研究発表の場を設けるなどの取り組みを増やしていく予定です。
また、県内の中学校や高校に出向き、理工系学部で学ぶ学生の大学生活や研究内容について紹介するなど、学外にも活動を展開し、理工系裾野拡大のための取り組みをより充実させていきたいと思います。近年では、PBL(Project Based Learning)に注力し、「総合的な学習の時間」等において、探究活動を盛んに行っている中学校・高校も多くあるため、そのような学校と連携し、理工系分野の探究活動を行う中高生への助言・進路相談等の機会を設けることは、次世代育成において大変有効だと考えます。
さらに、留学生も積極的に参加する本プログラムにおいて、各国の理工系分野におけるジェンダー平等に向けた取り組みを紹介するなど、日本の現状だけでなく、世界全体を視野に入れた活動も効果的であると考えます。ジェンダー平等の観点ではまだ発展途上である日本において、本プログラムの改善点を見出すうえでも、本学におけるダイバーシティの推進事業全体に関する取り組みについて、新たなアプローチや施策を模索していきたいと思います。効果の薄い取り組みの見直しや方向転換の検討、さらには抜本的な対策を視野に入れつつ活動を継続していく予定です。次世代育成事業は、中長期的な視点で取り組むべき課題であり、様々な施策の相乗効果により課題解決に近づくことができるのではないかと考えています。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
問合せ先
富山大学 ダイバーシティ推進センター