京都大学
京大病児保育室〜国立大学法人として初めての設立から12年〜 音声読み上げ
掲載日:2019/09/18
更新日:2024/01/15
2024年1月現在、コロナ禍より引き続き病後児保育室として運営しています。詳細は、病後児保育室「こもも」HPをご参照ください。
京大病児保育室:設立の背景
京都大学は、優れた教育・研究機関として国内外に認められており、今後さらに国際競争力のある人材育成と先端研究等への積極的展開を目指しています。
そのためには、世代をまたぐ優秀かつ多様な研究者の活躍が必要不可欠であり、中でも若手並びに女性研究者の活躍は重要です。
そこで、2006年度に採択された科学技術振興調整費「女性研究者の包括的支援-京都大学モデル-」により、卓越した女性研究者を輩出する環境を整えるため、2006年9月に基盤となる「京都大学女性研究者支援センター」(2014年4月1日から組織改革により男女共同参画推進センターに名称変更)を設置した上で、4つの事業、「交流・啓発・広報」「相談・助言」「育児・介護支援」「柔軟な就労形態による支援」を包括的な女性研究者支援事業として実施し、女性研究者が能力を最大限発揮できる環境を京都大学モデルとして創出し、男女共同参画社会への貢献を目指しました。
このうち「育児・介護支援」事業では、仕事を中断することなく研究に専念できる環境を整える目的で、2007年2月に京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)と連携して、京大病院内に「京都大学男女共同参画推進センター病児保育室」(以下、京大病児保育室)を設置しました。発熱や緊急時への対応のため、感染防御を想定した陰圧室を備え、小児科医との連携も密に行える体制を整えています。これは国立大学法人としては初めての試みで、文部科学省の支援のもとで、その後全国の大学法人や研究機関で設置が相次いでいます。
京大病児保育室:概要及び運用
京大病児保育室は、京都大学教職員・学生の子どもが病中・病後のため幼稚園・保育園・学校へ登園・登校できない時、親が仕事や研究を休むことなく、子どもの保育ができる環境を提供する施設であり、京都大学医学部附属病院と連携し、看護師・保育士が常駐する安心できる環境において保育を行っています。また、通常の保育室と隔てた別室に空調を整備した隔離室を設け、子どもの疾患や状態により移動可能と柔軟に対応しています。総長特任の担当助教として配属された専任の小児科医師が、毎日子供たちの事前診察や回診に携わっています。
運用は事前登録制で、登録者数はのべ1,100名を超え、毎年の新規登録者は約100名と年々増加傾向にあります。定員は5名(感染隔離室1名を含む)であり、毎年の利用者は1,000名近くにのぼります。利用状況は感染症の流行に大きく左右され、定員を上回る利用希望のために断わらざるを得ない日が続くこともしばしばあり、今後の検討課題となっています。
保育室開設後、京都大学教職員・学生が育児を行いつつ、仕事や学業を継続することの可能な環境を実現するため、常によりよい運営方法を考えながら活動しており、定期的に利用者へのアンケート調査を行い、要望に基づいて以下のような改善を図ってきました。
・ 2008年5月より学生割引(半額)を導入
・ 2009年2月に病児保育相談室を開室
・ 2009年12月に病児保育室内に感染隔離室を設置
・ 2015年6月より利用基準を変更(疾患により急性期でも保育可能へ)
・ 2016年4月より利用開始時間を8時15分から7時30分に変更
・ 2019年4月より対象年齢上限を小学校3年生より6年生に変更
また病児保育室のシステム・ルール作りについては、下記の各部署と連携して運営しています。
・ 京都大学医学部附属病院感染制御部(ICT)
受入可能な感染症のルール作りや感染予防に関する制度設計など
・ 京都大学医学部附属病院医療情報企画部
電子記録システムの設計・導入、通信ネットワーク維持や管理の対応など
今後の展望
現在京大病児保育室は定常的な運用体制を確立しており、科学技術振興調整費による支援終了後は京都大学独自の経費にて維持されています。
京都大学モデルの事業で設置された京大病児保育室の発展は、他の大学に対するひとつのモデルケースとして波及していく効果をもたらしました。また「今、そこにいる女性研究者の支援」(相談窓口、育児・介護支援など)から、「近未来における女性研究者の増大をもたらす事業」(出前授業など)、現在から未来に広がりつづけ、展開していく事業としても非常に有効なものであり、この意味でも他の大学における女性支援にも波及効果が発生すると考えられます。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている