九州工業大学
Kyutech Project:「九工大方式」で女性教員増・研究力upを! ~「独自の推進体制」×「複合支援」=「九工大方式」 音声読み上げなし
掲載日:2019/09/12
伝統と、新しい動きへの対応と:九州工業大学の生来の気質
九州工業大学は、2019年に創立110周年を迎えた伝統ある大学です。明治40年、北九州の地に、安川敬一郎・松本健次郎の父子が巨額の私財を投じて、北九州の工業発展と工業教育のために明治専門学校を設立したのがその始まりです。地域・社会に貢献する技術者・エンジニアの育成という教育理念は現在も受け継がれ、グローバル化に対応した教育改革を実践するなど、地域や社会から求められている変化に敏感に対応した改革を進めています。
2017年度「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」に採択
近年、世界的にダイバーシティの動きへの対応が必要とされていますが、一般にわが国の工業大学では女性教員、女子学生比率がともに低く、対応が難しい面もあり、九州工業大学でもこの方面では遅れがちでした。しかし、2016年4月に男女共同参画推進室を設置し、2017年2月にはニーズの高かった「在宅勤務制度」を制定するなど、活動を進めていきました。こうした中、翌年の2017年度には、文部科学省補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」に採択され、工業大学における女性教員の増加という課題に本格的に取り組むこととなりました。
九工大方式=本学に特長的な方策の展開
女性教員の採用・昇任の増加を進めるためには、女性教員の研究力向上も必須です。ただ、これらの課題に対応するためには、従来の男女共同参画推進室による取組だけでは難しいと認識し、組織体制と支援体制の両方において独自の方策(=「九工大方式」)を進め、プロジェクトを推進することとしました。
組織における九工大方式=「男女共同参画推進会議」の創設
まず、「組織における九工大方式」として、学長をトップとする「男女共同参画推進会議」を創設し、男女共同参画推進室とは明確に役割・機能を分化しました。女性教員の採用等の人事面については男女共同参画推進会議が担当し、他方、女性教員の生活環境整備・研究環境整備については男女共同参画推進室が担うというように、両者の役割・機能を明確に切り分け、しかもその2つの組織が、それぞれの役割を果たしつつ車の両輪のように歩調を合わせながらプロジェクトを進める構成としました。
図にあるように、男女共同参画推進会議は、学長をリーダーとする組織であり、事業採択後、大学の構成員の多様化、ダイバーシティが肝要とする学長のリーダーシップのもと、積極的にポジティブアクション(女性限定公募)を展開しました。2017年5月から2019年5月までの間に連続して、工学系の女性限定公募を4件実施しました。
支援における九工大方式=「複合支援」
男女共同参画推進室においては、採択後より、研究環境整備として「女性研究者支援事業」を開始しましたが、特にこのうちの「支援研究員配置支援事業」がライフイベント中の女性教員の研究力向上にとって重要であることは周知の事実です。他方、九州工業大学では、男女共同参画推進室の設立当初より、ライフイベント中の教員に対して「在宅勤務」を積極的に推進していましたので、独自の支援方策として、「在宅勤務」×「支援研究員配置支援事業」という、2つの支援の併せ技による「複合支援」方策を展開しました。
ライフイベント中の教員にとって最大の悩みは、「研究時間の不足」です。在宅勤務は、特に自宅が遠い教員にとって、通勤時間を研究時間に振り分けることができ、「研究時間の確保」に有効に機能します。これに対し、大学における研究時間で効率よく研究を進めるためには支援研究員配置支援事業が有効で、この支援は「研究の質」を向上させます。この両者の「複合支援」により、研究時間をできるだけ確保しつつ、短い研究時間であっても研究の質を高めることで、研究力向上を図ることができるのです。
九工大方式の展開と成果
こうした独自方式=「九工大方式」の展開により、女性教員の採用・昇任の増加、研究力向上が、成果として現れています。
女性教員在職数・比率は、事業採択年の2017年5月1日では26人、7.5%でしたが、2019年9月1日には31人、8.8%へと増加しました。昇任については、この間、教授昇任3人、准教授昇任1人の4人が昇任し、教授昇任3人のうちの2人は工学系教授です。
また、研究力向上については、女性教員の科研費の採択率(継続含む)が大幅に上昇し、2019年5月採択分を2017年5月分と比較すると、工学系女性教員においては1.53倍という高い採択率となりました(全女性教員では1.27倍)。
このように、九工大方式の展開によって、女性教員の採用・昇任の増加、研究力向上の成果が着々と上がっています。これからも九工大方式を活かしつつ、積極的にプロジェクトを推進していく所存です。
以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
★D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている