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九州大学
女性枠設定による教員採用・養成システム~論文業績分析で明らかになった無意識のバイアス~ 音声読み上げ


掲載日:2019/09/25

九大方式の女性研究者採用システムの構築

九州大学は2009年「女性研究者養成システム改革加速」の採択を機に「女性枠設定による教員採用・養成システム」を開始しました。女性を優遇するのではなく、女性に活躍する機会を提供し競争力ある人材に育成するという本学の基本方針に基づく戦略的人事制度です。

国際公募により広く候補者を募り、採用部局と大学全体の2段階で透明性の高い審査を行い、優れた女性人材を発掘・育成するという本学独自のシステムを構築しました(図1参照)。10年間で応募者総数837人から50人(教授7、准教授25、講師2、助教16)を採用(採択率6%)し、その波及効果で通常人事でも女性の採用が増え、女性教員比率も2009年の8.2%から2019年の14.4%へと大幅に増加しました。この取組みは2017年に東京で開催されたジェンダーサミットでも世界的に優れた6つの取組みの一つとして紹介されました。

図1 「女性枠設定による教員採用・養成システム」概要

男女別論文業績分析から明らかになった無意識のバイアス

学術論文出版社エルゼビア社が2017年に発表した大規模ジェンダー分析法を基に九州大学でも男女別の論文業績分析をIR室の協力により実施しました。その結果、女性枠で採用された教員の研究業績が平均して高いことがデータとして裏付けられ[1]、2018年6月18日の朝日新聞電子版WEBRONZAでも紹介されました[2]。

また翌2018年実施した男女別・職位別論文業績分析(図2参照)では、若手女性枠教員(講師・助教)が、出産・育児などのライフイベントと両立しながら極めて優れた研究業績を輩出していることを数値として明らかにしました(図3参照)。これにより、テニュア教員となり安心して出産・育児ができる環境にあれば、家庭と研究の両立が十分に可能であることを定量的に示すことに成功し、同年9月の国際会議(世界社会科学フォーラム:WSSF)で発表しました[3]。

以上、論文業績分析から得られた結果は、日本に根強く残る様々な無意識のバイアスを払拭するものとして、極めて重要な意味を持ちます。例えば、①女性枠採用の教員の業績は一般採用者に比べて劣る、②女性研究者の実力は男性研究者に及ばない、③研究業績は職位に比例する、④家庭と仕事の両立は困難であるなど、様々な無意識のバイアスの問題を解決する手段として「データ」を使った議論は極めて効果的です。

図2 九州大学 男女別職位別論文業績分析(エルゼビア社SciVal活用)
図3 九州大学 女性枠教員のライフイベント解析

今後に向けて ~配偶者帯同雇用制度の導入、SENTAN-Qの開始~

九州大学では同居を望む研究者同士の夫婦を同時または連続して正式な教員として採用することで、真に優秀な研究者の確保や定着を図ることを目的とする配偶者帯同雇用制度を国内の大学で初めて創設し [4]、2018年秋には第1号が誕生しました。さらに本年度より女性研究者ならびに若手研究者の上位職登用を加速的に進める目的で、ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修(SENTAN-Q)を開始しました。

九州大学は2006年以降継続している女性研究者の両立支援施策に加え、世界的な研究・教育拠点大学を目指す取組みとして、今後も戦略的人事制度や女性研究者の活躍可視化、男女双方の意識改革を推進して参ります。

【Reference】
 [1] ポリモルフィアVol.3, pp.33~37 (March 2018)  ISBN 2424-1113
 [2] https://webronza.asahi.com/science/articles/2018053100003.html
 [3] ポリモルフィアVol.4, pp.40~47 (March 2019)  ISBN 2424-1113
 [4] http://danjyo.kyushu-u.ac.jp/notice/view.php?cId=2600&

 

【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
  取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
  成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
  双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている

問合せ先
九州大学 男女共同参画推進室


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