名古屋工業大学
工学系女性の着実なキャリアアップを支援―多様性人材育成プログラムNITech CAN for ID― 音声読み上げなし
掲載日:2019/10/02
あらゆるステージの女性工学人材を育成対象に
1905年に中部圏初の官立高等工業学校として創設された本学は、幅広い産学連携の実績を活かし、「実践的工学エリートの育成」を目指す工学系単科大学へと発展を遂げました。
近年、イノベーションの創出には女性を含む人材の多様性が重要であるとの認識が拡がり、優秀な女性技術者・研究者の輩出への期待が急速に高まっていますが、工学分野は女子学生、女性研究者割合が著しく低いため、あらゆるステージの女性研究者を支援の対象として育成し、裾野拡大を図らなければなりません。
そこで、文部科学省人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」の下で、本学は、研究に従事しながらもこれまでキャリア形成の対象ではなかった非常勤研究員にも注目し、将来有望な女性研究員を発掘して支援の対象から漏らさず育成し、女性研究者に着実なキャリアアップの道筋を作る「多様性人材育成プログラム:NITech CAN for Innovative Diversity」を構築しました。
「多様性人材育成プログラム:NITech CAN for ID」 とは、本学が長年培ってきた産学官連携の実績を背景に、工学分野のダイバーシティを高めるために必要な、「知る=Comprehending、行動する=Acting、繋がり、拡げる=Networking」の3つの指針を産業界と大学が一体となって遂行するしくみです。
女性の可能性を拡げる
産学が一体となり、学生から研究員、研究者、研究リーダーまでの全てのステージの女性工学人材に対して、育成と支援を行うことで、女性工学人材の流動性・機動性を高め、女性研究者の増加を目指します。企業には、さまざまなレベルで研究・開発に携わる女性が存在します。こうした高いポテンシャルを持った工学系の女性たちが本学の女性研究者と共同研究を行ったり、博士課程に社会人として入学し、学位を取得して業績を積むことで、従来のルートとは別の女性研究者育成の道を拓くことができます。
工学を志す女性にとって、研究キャリアへの多様な道を拓くことは、活躍の場や方法において多様な選択肢と可能性が広がることにつながります。多様な未来を思い描ける分野は、次世代を担う女子中高生にとっても、魅力的な進路になります。「C:知る・A:行動する・N:繋がり、拡げる」の3つの指針を産学で共有し、ダイバーシティ研究環境を実現していきます。
NITech CANの取組
「C:知る・A:行動する・N:繋がり、拡げる」の3つの指針は、各取組のカテゴリーとして機能しています。
「C:知る」の取組として、研究力や女子学生の研究キャリアへの意欲を高めるためのセミナー開催、メンターが女性研究者の課題を把握してキャリアアップのための道筋を示し導く「女性研究者メンター制度」があります。
「A:行動する」では、女性限定公募などのポジティブ・アクションに加えて、研究助成金付与、優れた研究業績を挙げることが期待される本学の女性研究者を対象とする学長褒賞「女性が拓く工学の未来賞」による顕彰によって、女性研究者の研究力とプレゼンスの向上をバックアップしています。また、ライフイベント期の研究者に対しては性別を問わず、研究支援員の配置、ベビーシッター利用補助制度などでサポートを行います。
「N:繋がり、拡げる」では、OG人財バンクを通しての女性工学人材の発掘、女性研究者データベースの公開による産業界との共同研究の推進、企業在籍の女性研究者・技術者をプロジェクト教員として本学に招聘する取組により、産業界との連携を強化しています。
C・A・Nの好循環が生み出す成果
2019年度は「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」事業3年目を迎え、C・A・Nの取組の相互作用により、発掘、育成、登用の好サイクルが形成され、工学系女性人材の育成と上位職登用への道筋を示す具体的な成果が表れています。
育成面では、本学の女性研究者を代表者とする科学研究費補助金の採択率が、事業開始前の2016年度に30%(大学全体:30%)であったのに対し、2018年度は45%(大学全体:28%)に向上しました。また、女性研究者を代表者とする産業界との共同研究件数についても、2016年度に比べ2018年度は3倍に増加しており、事業開始後、女性研究者の大きな躍進がみられます。
登用の面では、事業開始後6件の女性限定公募による採用に加えて、非常勤研究員の上位職登用も実現しています。事業開始時にOG人財バンク発足の過程で発掘された非常勤女性研究員が、本プログラムによる研究助成と「女性が拓く工学の未来賞」優秀賞授与による顕彰を経て、2019年度に本学特任准教授に着任しました。この着任に伴い、他大学から招待講演の依頼を受けるなど、活躍の幅を広げています。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
★D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
★E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている