奈良女子大学
ライフイベントやワーク・ライフバランスに配慮した柔軟でニーズに沿った環境整備 音声読み上げなし
掲載日:2019/10/16
大学の基本理念に基づいて女性の活躍を応援
奈良女子大学は、基本理念の第一番目に「男女共同参画社会をリードする人材の育成―女性の能力発現をはかり情報発信する大学へ―」(2000年11月制定)を掲げ、この基本理念に基づいて、教育・研究・社会貢献における男女共同参画に向けた取組を推進し、学内外における女性の活躍を応援してきました。
男女共同参画推進機構の設置、女性人材育成のための環境整備
2005年11月に男女共同参画推進室が設置され、2006年度には、「女性研究者支援モデル育成事業」に採択され、「共助」をキーワードに女性の教育研究環境整備の促進が図られました(事後評価A)。2010年度には、「女性研究者養成システム改革加速事業」に採択され、これに基づいて理工系分野の女性教員の採用促進が図られました(事後評価A)。2011年度に「ポストドクター・キャリア開発事業」に採択され、女性ポストドクターに対するキャリアパス形成支援に向けた応援の姿勢も明確に打ち出しました(事後評価S)。2012年12月、男女共同参画推進室の組織の名称を「男女共同参画推進機構」に改め、男女共同参画推進本部、女性研究者共助支援事業本部、女性研究者養成システム改革推進本部、キャリア開発支援本部の4本部からなる組織となりました。2016年度からは女性研究者の研究活動の支援効果の向上を目指して、女性研究者共助支援事業本部と女性研究者養成システム改革推進本部を統合してダイバーシティ研究環境支援本部を設置し、2016年4月からは3本部体制で活動を推進しています。
課題・ニーズの把握・検討
男女共同参画推進機構は、機構長、副機構長、機構員で構成され、大学における男女共同参画推進活動に関する年度計画を立て、意識啓発のためのFD活動、他研究機関などにおける男女共同参画・女性研究者支援の調査、学内における男女共同参画推進の現状・問題点の把握、高度女性人材育成のために必要な支援体制・教育研究指導体制などについて学内ニーズの把握と問題点の検討を行っています。
地域・学生との「共助」システムを構築、教職員のワーク・ライフ・バランス支援
2005年度に男女共同参画推進室が設置された当初から、ワーク・ライフ・バランス支援の一環として、子育て支援の実施を目指しました。学内保育園の設置は、大学の規模が小さく利用者数が見込めず運営は困難ということで見送らざるを得ませんでしたが、規模が小さくても運用できるシステム、小さいからこそ細やかな支援が可能なシステムとして、地域・学生との共助システムを構築しました。これは、子育て支援を受けたい利用者(学生・教職員等)と、子育て支援サポーターを組織化し、学業・仕事と出産・育児等を両立させるためのシステムです。支援内容は、保護者等が個別に依頼する託児支援(ならっこネット)と研究会等における託児支援(イベント託児システム) です。子育て支援サポーターは地域の人々・学生・退職後の教員等で、独自に養成しています。年間6~8講座を開講し、専門家による講義や救命実習を行っています。利用者は、子どもの送迎・預かりを本学が開発したWebシステム『Webならっこ』で依頼することができます。学内で預かり支援を実施するために、「ならっこルーム」も整備しています。
教育研究支援員制度
2006年度より、出産・育児・介護等に関わる女性教員の研究活動の支援のために、主に博士後期課程修了者を教育研究支援員として採用する「教育研究支援員制度」を開始しました。2016年度より、男性教員も制度を利用できる様になりました。支援者と被支援者双方のキャリア形成、キャリア復帰等のチャレンジ支援・再チャレンジ支援に寄与するシステムです。
成果と新たな課題
ハード・ソフト両面からの女性の教育研究環境整備の促進と、研究の質の向上・研究スキルアップ支援等により、若手女性教員が増加しました。理学部若手女性教員(助教、准教授)のうち約60%が子育て中ですが、研究と両立させています。また、大学全体として、女性教員による科研費の獲得額の増加等、研究業績の向上が顕在化しています。上位職・管理職女性教員比率も増加しました。これに伴い、ニーズも増大し、多様化への対応が必要とされています。
これからの研究環境整備
奈良女子大学は2019年度科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」に選定されました。共同実施機関(奈良工業高等専門学校、武庫川女子大学、株式会社プロアシスト、帝人フロンティア株式会社,佐藤薬品工業株式会社)と共に様々な取組を実施していきます。研究環境整備としては、附属病院をもたない機関における「訪問型」病児・病後児保育システムのモデル構築等を目指します。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている