東京女子医科大学
勤務環境改善プロジェクト、女性医師復職支援、看護研究推進プロジェクト 音声読み上げ
掲載日:2022/02/28
1.女性医師・研究者を取り巻く環境整備及び研究力向上
【勤務環境改善の背景】
女性医師・研究者が専門業務により集中できる環境を整備する目的で勤務環境改善への取組が始まりました。当初は各職種が担う業務範囲を明確にし、内容効率化や振分け法を提案していましたが、画一的な支援よりも医局ごとの環境に合わせた個別の支援を優先すべきとの意見が数多くあり、平成29年度からは各科の医局単位で個別に勤務環境改善施策を実施しています。
【勤務環境改善の具体例】
【勤務環境改善の成果】
女性医師・研究者だけでなく男性も対象としている事で、医局内での取組に対する抵抗感が軽減され、さらにトップダウンではなく、医局内で結成したワーキンググループを中心に医局員自らが課題を抽出し、課題に沿った取組を計画・立案そして実行する為、医局全体が主体性を持って取り組むことができ、その結果として取組は継続されています。また、毎年行われるシンポジウムで「勤務環境改善プロジェクト報告」として発表を行っており、勤務環境改善の好事例を周知することで、学内全体の意識改革に繋がっています。
また、勤務環境改善と並行して研究力向上にも取り組んでいます。
【研究力向上の取組】
女性研究者による研究成果の発信力を高め、上位昇格や競争的研究費獲得につながる実績をあげられるよう、「英語論文の具体的な書き方」や「英語のプレゼン方法」についての英語論文セミナーを毎年数回開催し、セミナー受講者を中心に英語論文校正費用半額補助を実施しています。また、英語関連の他、統計学や科研費に関するセミナーも定期的に開催しています。
【研究力向上の成果】
研究力向上の取組の成果は顕著に表れています。本学の女性教職員の文科省科研費応募件数は例年コンスタントに維持されており、年々増加しています。また新規採択率の男女比においては、直近の令和2年度で男性27.2%に対し女性28.0%と男性を超えて増加しています。
2.女性医師の復職支援
女性医師(研究者)はライフイベント等の様々な理由により離職してしまうケースも少なくありません。配偶者の転勤等により地元や出身大学から離れてしまうことも多く、相談できる場所もないまま離職期間が長くなってしまう傾向があります。
復職を希望している女性医師が少しでもスムーズに復職できるように、「女性医療人キャリア形成センター女性医師再研修部門」では平成18年より復職・キャリア相談(実地研修含む)を実施し、令和3年8月現在で291名の方からご相談をいただいています。
【復職・キャリア支援のノウハウを全国展開】
日本で唯一の「女子医科大学」である本学は、卒前卒後に関係なく指導や教育を行うメンターとサポートを受けるメンティーとの関係性が自然に醸成され、女性医師の復職支援やキャリア支援において様々なノウハウが培われてきました。
◆長年培われたノウハウをもとに全国から寄せられた復職・キャリア相談に対応
◆ ノウハウと対応実績を「相談者の傾向」としてパターン化して報告書を作成
⇒ キャリア支援モデルとして全国展開
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【相談者の内訳(令和3年8月現在291名)】
相談者の80%は本学以外の出身者でお住まいの地域も全国に及びます。
【相談・研修後の状況調査アンケートより抜粋(令和元年5月-7月実施)】
3.看護職を対象とした研究推進支援
本学では女性医師・研究者のみならず、看護職員を対象とした研究推進支援を行っています。
【看護管理者を対象としたセミナー・ワークショップ開催】
①看護研究スキルアップワークショップ
看護研究に関する教育支援・啓発活動として、看護管理者を対象としたセミナーやワークショップを行っています。
〈開催例〉
・「学会に向けて抄録を書いてみよう」
・「看護研究における倫理指針」
・「ケアの意味を見つめる事例研究セミナー」
〈参加者の声〉
・研究活動の後押しになる
・研究意欲が出る など
②「研究支援者」に対するスーパーバイズおよび相談・サポート
修士号を習得し、これまでに研究および論文を投稿した経験がある職員の中から看護部長職が「研究支援者」を任命し、各施設において広く看護職員の研究力向上および研究推進を図っています。さらに看護学部教員が中心となって「研究支援者」を対象とした「ピアサポートの会」を開催し、研究支援者同士の情報交換やスキルアップも行っています。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている