お茶の水女子大学
「お茶大インデックス」を用いた教育・研究機関の雇用環境評価 音声読み上げ
掲載日:2022/03/07
お茶の水女子大学(以下、本学)は、国立の女子大学として長年にわたり先駆的女性研究者を多数輩出してきました。しかし、我が国における女性研究者比率は、諸外国と比較しても未だに低い状況にあります。これまでに女性活躍推進や女性研究者増にかかわる補助事業が多数展開され、採択機関を中心にその成果は広がりを見せたものの、全国の教育・研究機関に浸透するまでには至っていません。
本学は、2006〜2008年度に科学技術振興調整費による女性研究者支援モデル育成事業「女性研究者に適合した雇用環境モデルの構築」に採択され、学長のリーダーシップのもと、女性研究者が研究と出産・育児を両立させてその能力を十分に発揮できる仕組みを構築しました。その成果の一つとして教育・研究機関における雇用環境の自己評価指標(女性が働きやすい雇用環境を構築するためのチェックシート)「お茶大インデックス(図1)」を開発しました。なお、産業界における雇用環境評価指標は複数存在していましたが、教育研究機関の雇用環境を評価する指標は存在せず、「お茶大インデックス」は全国初の教育・研究機関の雇用環境評価指標として誕生しました。
この「お茶大インデックス」は、本学独自のシステム改革手法をもとに以下の3つのステップを経て開発・作成しました。
STEP1:システム改革を実施し、雇用環境と体制を整備
学長の強いリーダーシップのもと、「組織の制度改革と支援体制」、「勤務体制」、「女性研究者支援体制」の3つの取組によって、制度・意識を改革するための「システム改革」を行い、雇用環境と体制を整備した。
STEP2:整備した雇用環境と体制を有効に活用し、「お茶大モデル」を作成
「システム改革」で整えた雇用環境と体制を有効に活用するために、具体的な支援・取組を実施した。本学におけるこれらの具体的な支援・取組を「お茶大モデル」と呼んでいる。
STEP3:「お茶大モデル」から「お茶大インデックス」へ
「お茶大モデル」を他の教育・研究機関においても活用できるようにチェックリスト化し、さらに他機関の好事例を合わせた50項目(図2)をもって「お茶大インデックス」を作成。
このように開発・作成したインデックスを用いて、2010年度より毎年1回、女性研究者支援事業採択機関(注に自機関の評価を依頼し、本学がその結果を取りまとめ、分析した結果をレポートにまとめて広く社会に発信しています。なお、協力機関には自機関の支援バランスを確認できる「支援バランスレーダーチャート(図3)」と、評価得点に合わせて女性研究者が働きやすい雇用環境を整備する手法をまとめた「COSMOS Work Book(図4)」を送付しています。
これにより、自機関における支援の過不足の確認、回答機関平均値との比較が可能となり、支援活動計画立案や各機関の上層部に雇用環境の整備について働きかける材料としての活用も可能となります。2010年度から2020年度における回答機関数を表1に、評価結果(平均得点)を表2に示します。
表1 2010年度~2020年度における「お茶大インデックス」回答機関数 |
お茶大インデックス50項目のうち、各年度における最高得点項目は、調査開始時の2010年度から2014年度まで(1)女性研究者を支援する組織の設置、(33)ホームページによる情報発信、(45)ハラスメントを防止するための取組、など1~2項目でしたが、2015年度以降は、(29)子育て中の女性研究者を支援するための研究補助者の配置、(33)ホームページによる情報発信、(45)ハラスメントを防止するための取組、(48)男女共同参画に対する意識啓発、など複数の項目で高得点となり、取組実施により雇用環境整備が順調に促進している様子が可視化されました。一方、最低得点項目を確認することにより、雇用環境の整備が促進した今現在における課題や困難、設置場所や予算の確保が難しい取組を明示することができました。 注)お茶大インデックスを用いた調査依頼は、科学技術振興調整費による「女性研究者支援モデル育成事業」、「女性研究者養成システム改革加速事業」、科学技術戦略推進費による「女性研究者研究活動支援事業」、文部科学省科学技術人材育成費補助事業 「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」に採択された機関の協力を得て実施している。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目 問合せ先
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