新潟大学
次世代の研究者育成事業 ―持続可能な循環型の育成を目指して― 音声読み上げなし
掲載日:2022/03/14
更新日:2023/12/18
新潟大学は、平成 20 年度(2008年度)文科省事業「女性研究者支援モデル育成」に採択されて以降、女性研究者の活躍推進に向けた採用・登用、育成、支援を積極的に推進してきました。特に次世代の研究者育成では様々な取組を展開し、これまでに19人の女子学生を大学等の教員や国立系研究所等の研究員として送出しています。さらに送り出された者らが新潟大学の非常勤講師として研究職キャリア経験などを学生に向けて講義する科目も開講し、循環型の育成となっています。
■博士課程学生グループ「新大Wits」による中高生への出前授業活動
○概要
文部科学省「女性研究者支援モデル育成」事業の取組のひとつとして、博士課程学生のスキルアップ及び中高生の科学への興味関心の喚起の双方を目的に、平成21年度(2009年度)に創設しました。活動メンバーは全研究科の男女大学院生を対象に募集、TAに準じた非常勤職員として雇用し、大学見学の中高生への模擬講義や、依頼のあった学校での出前講義を行います。なお、活動メンバーのことは「新大Wits(ウィッツ)」と呼称。Witsは“We invite you to science.”の略記です。
○セミナーの内容
セミナー内容は「自身の行っている研究の紹介」及び「そこに至るまでの進路選択経験」であり、通常は45分授業となるよう構成しています。3、4人の文理融合チームでプレゼンを検討(一人当たり3、4回で完成)することにより、専門分野以外の人、特に、理系分野を苦手とする中高生にもわかりやすく研究の目的や意義、手法を伝える技術を修錬しています。
○受講した生徒や学校教員の声
・理系は細かい計算ばかりやっているのだと思っていました。今回の講演で理系のイメージが大変変わりました。
・私は理系に行きたいと思っていますが、数&理がさっぱり…です。でも、今日のお話を聞いて希望が持てました。理系の職業につけるようにがんばります。
・化学が苦手なんだけど、授業を見てこんなに楽しいということがわかった。
・好きな研究を生き生きと話す姿に子どもたちはとても良い影響を受けたと思います。話の合間の問いかけが生徒を飽きせず、素晴らしかったです。
○新大Witsになった博士課程学生の声
・中高生のため、少しでも自分の経験が役に立てばと思って参加したけれど、ものすごく自分のためになった。自分が研究に対してどんなに熱い気持ちを持っていたのか、どんな風に頑張ってきたのか、自信を持ってもいいことは何か、再確認できた。
・自分とは違う分野を垣間見ることができる、自分の知的好奇心が相手のセミナーにプラスになるというサイクルは面白かった。自分にとって「当たり前」のことがうまく伝えられなかったり、質問されたり、社会とのつながりを意識する時間でもあった。
・他分野の研究者との交流についてのハードルが下がったのを感じた。他分野であっても研究者として女性ならではの感じ方、考え方、経験などの相通ずるものがあり、男性研究者に囲まれて話をしている時とは違う楽しさ、盛り上がり、アイデアの発露があった。
○活動実績
新型コロナ以前は年に30回程度実施、約3000人が受講しており、受講した中高生の累計は、27,000名(内女性5割)を超えます。受講後のアンケートでは、8割以上が「楽しい」「わかりやすい」と回答し、特に、女子生徒の科学や研究への興味が受講後に大幅に伸びることが確認されています。これらの結果のいくつかは、学会や国際会議で発表したり、教育実践や論文として公表したりすることでメンバーの業績にもつなげてきました。
活動に参加した博士課程学生の累計は128名(内女性103名、自然科学54%、医歯学8%、保健学5%、人文社会16%、教育13%、その他3%)、その内、19名(内女性16名)が、卒業後に大学等の教員や国立系研究所等の研究員の職を獲得しています。
■理系女子応援活動
○オープンキャンパス「集まれ!理系女子」
JST「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」をきっかけに平成26年度(2014年度)より開始しました。自然科学系(理工農学部)を中心とした女子学生グループによるイベント(展示、実験体験、相談会等)を開催しています。
令和2年度(2020年度)からはオンライン相談会として実施しています(完全予約制で申込枠はすぐに満席に。R1(2019):18人、R2(2020):32人)。参加者アンケートでは、「リケジョの良い所が沢山知れた」「理系に行くことに少し不安があったけど、話を聞いて頑張ろうと思った」などの感想が寄せられています。
○ニューズレター「Ni-Che!(ニッチェ)」の発行
文部科学省「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(連携型)」事業の一環として、平成27年度(2015年度)より、女子学生3名が新潟県内の教育機関や企業等の女性研究者を取材した様子を記事にして発行しています(現在14号まで)。取材学生は、事前に質問内容や当日の進行などの打合せを行い、決定した質問内容は予め取材先に送付しておきます。取材には、プロのカメラマンとライターが同行し、撮影や取材記録を行います。学生にとっては、就職後の仕事と生活の実態や女性ならではの苦労や面白みなどを直接伺う機会となり、取材先にとっても広報機会となるWin-Winの取組
■その他
○関連授業の開設
・学部生向け:「研究者の仕事と生活」(集中講義、1単位)
・自然科学研究科:「ワーク・ライフ・バランス」(集中講義、1単位)
文部科学省「女性研究者支援モデル育成」事業をきっかけに開講しています。オムニバス。研究職キャリアパスの多様化が進む現状を踏まえ、研究職に対する理解を深め、仕事と生活の調和のとれた長期的なキャリアデザインの視点を提供するものです。新大Wits経験者が非常勤講師として登壇しています。
○特別研究員RPD制度の周知と申請勉強会
全研究科の大学院生を対象に平成21年度(2009年度)から開催しています。制度の概要説明や、審査員経験のある教員・採用学生2、3名による講演やアドバイスを行います。コロナ前までは対面で開催、参加者は30~40名程度(自然研が6割)。RPD採用者の全員が本学教員の職を獲得しています。
○長岡高専教員体験会
平成27~31年度(2015~2019年度)に、長岡工業高等専門学校との連携により開催しました。2日間のプログラム(1日目:専攻科特別研究発表会の見学、2日目:1・3年生クラスにおける学活指導体験、施設見学、研究室訪問)で、これまでに、26名(内女性11名)が参加しました。その内5名(内女性3名)が、参加後に、高専や大学等の教員職を獲得しました。
○自然科学研究科特任助手任用事業(女性限定)
博士後期課程女子学生を助手に任用する取組を令和2年度(2020年度)に創設。令和3年(2021年)4月1日2名着任。
取組の中でも特に、「新大Witsによる出前授業」や「理系女子応援活動」などの後進を育てる活動では、参加学生のスキルアップと中高生の科学への興味関心の喚起だけでなく、大学としての入試広報にもつながり、さらに、活動の継続によって育成の循環が生まれています。このような参加学生の「後進を育てたい」という意欲に根差した活動を、本人のキャリアアップに繋げ、さらに、学生確保のような組織のメリットとも連動させながら持続可能な活動に発展させていくことが、科学に興味を持つ女子学生を増やすための理想的な策の一つだと考えます。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
問合せ先
新潟大学 経営戦略本部ダイバーシティ推進センター
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