九州大学
女子高校生を対象とした九州大学理系インターンシップ制度 「QURIESプログラム」 音声読み上げ
掲載日:2022/03/23
更新日:2023/12/22
取組概要
九州大学(以下「本学」という。)では、令和3年度に女子高校生を対象とした本学理系インターンシップ制度「QURIESプログラム(以下「本プログラム」という。)」を新設しました。本プログラムの名称は、Kyushu(Q) University Research Internship in Engineering and Scienceと、女性科学者のパイオニア、マリ・キュリー(Curie)博士の名前とを合わせたものです。
本学は本活動を通じ、広く女子高校生の理系分野への興味・関心を喚起して裾野を拡大し、学術研究の将来を担う優秀な若手理系女性研究者・技術者を長期的に育成し、九州から世界へ羽ばたく女性を一人でも多く輩出する支援をします。
<目的と社会的意義>
本プログラムは、大学進学前の意欲に溢れる優秀な女子高校生を対象とし、本学の先端的な研究環境の一端に触れる機会を提供するとともに、本学理系分野の教員をメンターとして、座学ではわからない刺激的な研究活動の体験の場を提供することで、学術研究の将来を担う優秀な若手理系女性研究者・技術者が多く輩出されるよう、その支援を行うことを目的としています。
<寄附金での柔軟な運営による持続的な活動>
世界的に著名な科学者で、かつ若手女性研究者の支援に尽力されてきた本学の故伊藤早苗名誉教授のご遺族から寄附があり、その寄附金で本プログラムは運営しています。寄附金による運営とすることで、女性の活躍促進、育成に特化したアファーマティブ的使用が可能となるとともに、運営費交付金では支出が難しい高校生への支援や、3年から10年程度といった国の助成金の支援期間を超えた、持続的な独自の活動が可能となり、執行面でも臨機応変に対応することができます。
<研究室配属と受入れ側の研究テーマとの社会的接点>
開始初年度にあたる令和3年度は試行プログラムとして本学に進学する人数の多い福岡県下の3つの公立高校に推薦を依頼して参加者を募集しました。本プログラムへ参加を希望する応募者は、個人およびグループでの参加を可能とし、本学が提示した研究テーマリスト(受け入れを申し出た理系学部等の 32 研究室(工学部関連 26、理学部関連 5、農学部関連 1) のテーマリスト)から自分が取り組みたい研究分野・テーマを選択し、志望理由及び実施期間中の研究活動や指導を受けたい内容等を記載した申請書を提出し、調整の結果、応募者全員を受講生とし、19研究室への配属を決定しました。
SDGsの分野など社会的接点のある研究室に生徒の人気が集中するなど、配属希望の集中した研究室の傾向から、女子高校生の理系の進路決定には社会との関わりが大きく影響していることが読み取れました。
<地域連携による裾野の拡大の必要性>
試行となった令和3年度は3校から45名の参加がありました。本プログラムの実施にあたり3校と企画内容について相談し、実施期間や支援対象等について企画案を策定しました。さらに、福岡県教育委員会にも事前に相談するなど、関連する機関と連携しながらプログラムを作成しました。今後も、女子高校生のニーズ等の把握に努めるとともに、地域の関係機関と連携しながら本事業を進めていきます。
<急遽オンラインに切り替わった令和3年度の実施の様子>
8月7日のオリエンテーション後、8月16日から各研究室に1週間配属されて研修を受ける予定が、新型コロナ感染拡大を受けてオリエンテーションは中止、本プログラムは急遽オンライン開催に切り替えました。
実施期間は8月18日から20日の3日間に短縮し、研究室での演習の代替として、受講生を配属予定だった19研究室の教授からTAの修士学生まで、バラエティに富む講師による研究紹介が各30分ずつ行われました。オンラインで実験室の装置や実験の実演等をライブ中継し、受講生が臨場感を持って大学の研究の様子を垣間見られるような工夫もあり、受講生も積極的に質問し、活発な議論を行うことができました。
また、2日目の昼休みにはランチタイム交流会を行いました。受け入れ予定だった研究室の教員をファシリテーターとし、受講生が8つのグループに分かれ、教員やTAの大学院生に対して進学の相談や留学の機会、理学と工学の違いなど基本的な情報をはじめ、悩みや疑問について昼食を取りながら約1時間自由に話をしました。最後に各グループから出た話のまとめを代表の受講生が発表し、中には来年も参加させて欲しいという要望が出ました。
今回のオンライン開催では、院生などの若手女性研究者も講演や実験のデモンストレーション等を通じて参画しました。特に本プログラムと同じ基金で運営されている「九州大学若手女性研究者・女子大学院生優秀研究者賞(伊藤早苗賞)」を受賞した大学院生が積極的に本プログラムのサポートを行いました。女子高校生と年齢が近い若手女性研究者が積極的に参画したことで、受講生が会話をしやすいプログラムになりました。
<2年目以降の実施状況>
令和4年度は初年度の試行結果を受け、対象を県内の通学できる範囲に広げて、13校28名の受講生による対面での開催が実現しました。期間は8月17~23日の土日をのぞく5日間で、工学部、理学部、農学部の19研究室で個々の課題に取り組みました。内容も1年生から3年生までのレベルに応じた配慮がされており、最終日の報告会では、受講生28名全員が1人ずつ活動報告を行いました。
令和5年度は12校24名の参加があり、工学部、理学部、農学部に加え、実験研究を行う文学部や他キャンパスの大学院総合理工学府などの19研究室で受講生を受け入れました。期間は8月8~10日、17~18日の5日間で対面での実施予定でしたが、台風接近の影響で2日目と3日目は対面実施が中止となりました。そこで急遽受け入れ研究室側が、台風明けの実験に備えた綿密な準備やオンラインでの受講生への指導など種々の工夫を凝らし、最終日を迎えました。対面指導が限られる中、最後の研究活動報告会では2つのグループに分かれて受講生1人1人がインターンシップでの学びや研究内容を発表しました。
本プログラムは参加する女子高校生にとって理系分野への興味を掘り起こし、モチベーションをアップさせる効果があることは当然ながら、受け入れ研究室にとっても高校生に指導することで、準備や指導の過程で、新たな発見や気づきがあり、また時には不測の事態に柔軟に対応する経験を積むなど大きな収穫がありました。
今後も学内外の方がたの多くの協力を頂きながら本QURIESプログラムを継続し、学術研究の将来を担う若手理系女性研究者・技術者の長期的な育成につなげて参ります。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
★C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
★E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
問合せ先
九州大学 男女共同参画推進室