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九州大学
ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修(SENTAN-Q) 音声読み上げ


掲載日:2022/03/23
更新日:2023/12/22

取組概要
 九州大学では、科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(先端型)」(2019年採択)において、女性ならびに若手教員の早期の内部昇格を進める「ダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成研修(SENTAN-Q)」を実施しています。本研修では、採用した女性研究者の上位職登用を通じて、人事の流れを正常化させ、女性研究者の定着や新規採用、活躍の促進が期待されています。

図1.九州大学の女性教員人数・比率の推移

<背景>
 九州大学では、2009年の「九大方式女性枠」開始後、順調に女性研究者数が増加していましたが、2015年をピークに一時停滞が生じていました。データ分析の結果、新規採用数は変わらず増えているものの、採用数を超える女性研究者の学外転出が生じていることがわかりました。すなわち女性研究者の内部昇格の遅れが女性研究者の定着を阻んでいることが明らかになったのです。
 この対応策として本学が開始したのが、 SENTAN-Qです。これにより実績を積んだ女性研究者を速やかに内部昇格させる学内システムを構築しました。

 

<研修の詳細>
 本研修は、多様で秀逸な女性ならびに若手人材を学内から発掘し、世界と伍して戦えるダイバーシティ・スーパーグローバル教員として育てることを目的としています。研修生は、将来上位職あるいは管理職に登用することが見込まれる部局推薦の女性研究者(年齢制限なし)ならびに若手男性研究者(37歳以下)の中から、透明性の高い全学の審査会を経て選出され、原則2年間のグローバル研修に参加します(ライフイベントの場合は1年まで期間延長可能)。そして、世界トップレベルの海外講師に直接指導を受け、自身の研究教育力を厳しく評価され、世界を舞台に他国の研究者と渡り合う自信を身につけていきます。目標レベルに到達した研修生には認定書が与えられ、原則1年以内に1段階の内部昇格が施されます。
 研修を通じて、国際通用性のある研究教育スキルが身につくとともに、将来上位職となった後に必要とされる幅広い知識の習得が期待されます。性別ならびに文系・理系の垣根を超えた学内ネットワークの形成、認定書付与による無意識のバイアスの排除も期待される効果です。

SENTAN-Q研修は以下の6つのSTEPで構成されます。
 STEP1 研修生の選出(実質的な昇格審査)
 ・透明性の高い全学審査により、部局推薦候補者の中から候補者を選出する(10名/年)
 ・研修生の男女比率は原則1:1、文理融合のクラス編成
 ・審査員の男女比率も原則1:1、審査員は審査前に無意識のバイアスチェックシートに署名、提出する。
 STEP2 大学ガバナンス、ダイバーシティ・インクルーシブ教育(国内研修)
 STEP3 英語でのアクティブラーニング型教授法教育(国内研修)
 STEP4 留学生への英語での実践的研究指導(国内研修)
 STEP5 最新学問分野等のリカレント教育(学内研修)
 STEP6 最終試験:海外での実践的教育・研究指導(海外研修)

図2.SENTAN-Q研修内容

<女性研究者獲得のための仕掛け>
① 無意識のバイアスの無い公正な審査とすることで、女性研究者の応募(部局への自己推薦)を促す。
② 男女比率を1:1と明記することで、部局からの女性の推薦を促す。
③ 研修を通じて、本人の意欲を部局に伝える機会を作る。
④ 昇格分の人事ポイントをインセンティブとして部局に付与することで、部局からの推薦絶対数を確保する。

図3.SENTAN-Q研修スケジュール

 

<実施状況>
 初年度の第1期生10名(女性8名、男性2名)を皮切りに、毎年ほぼ10名の研修生が選出され、2年間の研修に取り組みます。202312月現在、SENTAN-Q5年目を迎え、研修生は第5期生迄51名(女性32名、男性19名)が選出され、既に研修修了者から7名の女性教授、9名の女性准教授が誕生しています。研修期間中に女性3名が出産し、男性1名が育休を取りましたが、産休・育休を取りながらも無事研修を修了、あるいは続行しています。
 現在研修中の第4期生、第5期生が順調に研修を修了すれば、第1期生から数えて17名の女性教授、15名の女性准教授が誕生することになります。

 

<波及効果>
●年功序列の習慣が残る日本の社会では、先輩の上位職昇格の遅れが後輩の昇格の遅れを生み、人事の流れが停滞しやすいです。これは男性人事だけではなく、女性人事においても同様です。本研修では、採用した女性研究者の上位職登用を通じて、研修生本人の本学への定着だけではなく、人事の流れの正常化により、新たな女性研究者採用の促進の効果が期待されます。実際、本研修の開始を契機に、各部局において、推薦できる女性研究者の掘り起こしが始まっています。

●本プログラムでは、将来の上位職あるいは管理職への登用を見越した研究教育力強化、マネージメント能力強化の研修がなされています。将来研修生の中から女性幹部候補生が生まれることが期待されます。

● 本プログラムでは、異なる部局に所属する研修生が、分野、職位、年代、国籍、性別を超えて、共にダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)について学んでいます。本研修を受けた男女教員(将来の幹部候補生)が学内に増加していくことで、全ての学生、教職員が対等に活躍できる、差別のない研究教育環境が整うことが期待されます。

●2018年に実施した女性枠採用教員のワークライフバランスに関する調査分析でも明らかなように、安定して研究できる環境が整えば、女性は出産育児に対して前向きになり、また両立支援制度が整えば、結婚・出産は研究活動の妨げにはなりません[1]。SENTAN-Q研修生についてみても、第1期研修生のうち女性8名は偶然全員が既婚者でしたが、うち2名が研修開始後に出産し、全員が子育て中ということになりました。SENTAN-Q研修生は、既に様々なイベントにおいて、本学における女性研究者のロールモデルとしての役割を果たしています。彼女たちの活躍は、将来のキャリアに不安を抱える女子大学生や、結婚・出産に躊躇する若手女性研究者にとって、明らかにプラスの効果を与えています。

[1]ポリモルフィア Vol.4, pp.41-47(2019年3月) [ISSN 2424-1113]

【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
  成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
  双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている

SENTAN-Q ホームページ : https://sentan-q.kyushu-u.ac.jp/
問合せ先
九州大学 男女共同参画推進室


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