東海大学
妊婦体験システムを用いた妊娠・子育て体験塾~パートナーも上司もリアルを知って両立支援 音声読み上げ
掲載日:2024/02/06
仕事と家庭が両立できる職場に向けた取り組み
本取り組みの背景は、学校法人東海大学が一般事業主行動計画において、学園全体での男性教職員の育児休業取得者数の向上を目標として掲げていることです。大学でも、男性の教員・職員による育児休業取得例は毎年数例ずつありますが、取得率はまだ高くありません。2022年度には「仕事と家庭が両立できる組織づくり」をテーマとしたSD研修会を開催し、育児休業・育児支援制度に関する教職員アンケート結果の紹介、改正育児休業法の解説、教員・職員の育休取得経験者による経験談を通じて、啓発を行いました。2023年度には、ダイバーシティ推進に関心をもつ教職員から自発的参加を募り、「ダイバーシティ推進タスクフォース」として緩やかにつながりながら、学内のダイバーシティにかかわる多様な課題を共有し、それぞれができる取り組みを考え、実施しています。
妊娠・子育てのリアルな体験塾
2023年12月には、本学の小坂崇之准教授(東海大学情報理工学部情報メディア学科)が開発した妊婦体験システム「Mommy Tummy」を用いた妊娠・子育て体験塾(トライアル)を実施しました。この企画の目的は、妊娠・育児中のパートナーを持つ教職員が育児に積極的に参加することと、妊娠・育児中の部下・同僚を持つ上司や同僚が、妊婦の身体や育児のリアルについての理解を深め、両立可能な職場づくりを考えるきっかけにすることです。
このMommy Tummyは妊娠過程を疑似体験できるシステムです。ジャケットに取りつけられた腹部の水袋に温水を徐々に注入することで胎児の重さと温かさを呈示します。また腹部に搭載された複数のバルーンを膨らますことにより胎動も感じることができます。また、ジャケットを着用した状態で仰向けに寝たり、床に落ちたものを拾ったりすることで、妊婦の身体的な負担が体験できます。また新生児人形を用いたおむつ替え等の育児体験もできます。
システム開発者からのメッセージ
体験塾では、システム開発者の小坂准教授が「モラハラ・パートナー」役として登場、妊婦役の体験者に対して心無い言葉を投げかける実演もありました。
小坂准教授からは「突然、明日からあなた一人で新生児育児をすることになったらどうされますか」という問いかけがあり、仕事上の危機管理体制同様に、あらかじめ妊娠や新生児育児に対する知識を得ておくことが重要であること、また自身の体験から、「今後親になる男性には、最低でも3カ月から半年は育児休暇・休職を取ってもらいたいが、1カ月でもいいから必ず取得してほしい」とのメッセージが伝えられました。
体験者の感想
体験塾の参加者には、妊娠中のパートナーをもつ職員や妊婦の部下を持つ所属長、将来のライフイベントに備えたいと考えている職員も含まれました。参加者からは、胎動の感覚、圧迫感やお腹の重みに対する驚き、妊婦の苦しさ、動きづらさへの気づきが寄せられるとともに、泣き止まない赤ちゃんを抱っこして「どうしよう」と焦る気持ち、苦しいときにパートナーから投げかけられる心無い言葉にわきあがる感情など、まさにリアルな育児への理解が深まり、育児休業の取得に対する意識が高まったとの声が寄せられました。
今度の展開
最初に述べたように、本学ではまだ男性教職員の育児休業取得率は低いため、性別にかかわりなく育児休業をとるのが当たり前という職場風土と、育児とキャリアの両立を支える制度的・組織的な環境整備を推進する必要があります。今回のイベントはトライアルという形でしたが大学のダイバーシティ推進施策としての継続的な実施・発展を検討していく予定です。妊娠・育児中や介護中の教職員のネットワークの拡大、そういった部下や同僚を支援する上司・同僚への支援策、職場内での相談支援体制の強化なども今後の課題です。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
★D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
★E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
★G その他(多様な分野の専門家を擁する総合大学の強みをいかした教職協働の取組)
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