筑波大学
筑波大学における女性限定公募の取り組み 音声読み上げなし
掲載日:2025/09/08
筑波大学では、研究・教育の更なる発展のためには、多様性のある人材構成が不可欠であると考えています。ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE)内のジェンダー支援チームは、ジェンダーバランスの改善のため、これまで様々な取り組みを行ってきました。2015年には科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」を採択し、筑波大、日本IBM、産総研が連携・協働して、それぞれの組織の女性採用・上位職比率の向上を目指してさまざまな取り組みを行いました。また、2023年からは、学長・副学長・各部局の長が一同に会して意見交換や情報交換、施策の議論を行うダイバーシティ・マネジメントサミットを開催しています。以前は、ジェンダーバランスの改善については、大学執行部やBHEが牽引する形で行われてきた印象が否めませんでしたが、取り組みの成果もあって、現状では、それぞれの部局がその重要性を理解し、積極的に取り組むように変化してきています。各組織における女性同士のネットワークも充実してきています。

一方で、本大学の全教員に占める女性教員の割合は20.7%(令和7年度)と、依然として十分とは言えない状況です。そこで今回、男女雇用機会均等法第8条(雇用の分野における男女の均等な機会および待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として行う、女性のみを対象とする取り組みや女性を有利に取り扱う取り組みは法に違反しない旨を定めている)に基づくポジティブ・アクションとして、女性教員の比率向上を目的として、女性を対象とした教員採用募集を全学的に実施することとしました。これは、イノベーティブな研究と教育を牽引する体制構築を目指す、本学の重要な施策であると位置づけています。
今回の女性限定公募は、全学一括公募14名(大学の全ての研究分野を対象として分野を問わない求人)と研究分野(組織)を指定しての公募6名の計20名で行われました。この規模での全学一斉の公募は恐らく他大学でも例がないと思われます。特筆すべき点は、公募が分野を指定していない枠が14名あり、応募者は自身の研究分野や業績から働きたい教育研究分野を選択することができるということです。職位は准教授・助教とし、優秀な若手の応募者を期待しています。公募は7月末日で締め切りましたが、応募状況は全体で809件(日本人442件、外国人367件)となりました。女性の研究者は分野によっては母数も少なく、応募自体が少ないため、採用が困難であるとの意見も多くありましたが、今回の応募状況を見る限り、潜在的には多くの女性研究者がいることがわかったことも価値があったと思われます。
大学が優秀な人材を獲得し、その能力を最大限に発揮してもらうためには、マネジメントサミットやBHEのこれまでの調査などから、女性のみならず、すべての人が働きやすい環境を整えていくことが重要であることがわかっています。今後の取り組みとしては、帯同雇用制度の検討、近隣都市とのさらなる連携、保育施設の充実、働き方の改善などを進めていくことが必要であると考えています。すぐに改善できることには限りがありますが、今後も現場の声を丁寧に聞きながら、一歩一歩進めていければと考えています。
【以上の取組の成功に向けた留意点】 ★は該当する項目
★A 戦略性:機関の経営戦略として位置づけている
★B トップのコミットメント:機関のトップが牽引している
C 取組体制の整備:実施責任者を置き、明確な実施組織等を整備している
D 成果目標:具体的で明確な目標等を設定している
E 双方向のコミュニケーション:幹部層と構成員のコミュニケーションを促進している
F 説明責任と透明性:外部評価委員会等を設置し、外部の意見を取り入れる体制としている
G その他(当事者の積極的な参画の仕組みづくり)