【近畿ブロック】院生が考える幸福感、博士進学、研究者のキャリアへの不安にどう向き合ったか (2021年4月28日掲載) 音声読み上げなし
立命館大学大学院理工学研究科 機械システム専攻ロボティクスコース
生体工学研究室 博士前期課程2回 増田 葉月
工学の力で人々の健康の手助けをしたい
私は、立命館大学の岡田志麻先生の研究室で、生体工学に関する研究をしています。ヒトの心身の状態をセンシング/介入することで、人々が生涯にわたって健康に生きる手助けをしたいと考えています。
ここで、私の研究内容について、少しお話させていただきます。皆さんは、体内時計が乱れた経験はありませんか。体内時計が乱れると、食欲不振、学力低下など、心身ともに不調をきたします。体内時計とは、概日リズムを形成するための24時間周期のリズム信号を発振する機構のことです。私は、睡眠中にウェアラブルデバイスで心拍数を計測するだけで、その概日リズムの最低点をモニタリングできるシステムの開発に成功しました。この結果を応用し、現在は、概日睡眠障害治療、スポーツ選手のコンディショニングの研究を進めています。
自分のやりたいことを如何にバランスよく取り組めるか
現在、私は、自分自身が興味のあることについて研究しているため、学業をワークとして捉えていません。研究の他に、超創人財育成プログラム(※1)を受講したり、多分野の学生らと学術交流(ミニ講義)を行ったりしていますが、これらもやはりワークというより、楽しんで参加していることです。ですから、私の場合、ワークライフバランスの実現を目指しているというよりも、自分のやりたいことをバランスよく取り組もうと心掛けているといったほうがよいと思います。
私には、やりたいことがたくさんあります。学部生に学びをサポートすると共に自らスキルアップができるTAや物理駆け込み寺(立命館大学内の学習支援)の講師、自炊、コロナ禍でも運動不足にならないように始めた筋トレ、睡眠、家族や友人との電話でのおしゃべりなど、本当に様々なことがあり、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
あれこれやりたい私にとって、スケジュール管理はとても大切です。私は、googleカレンダーを利用し、計画的に行えるように工夫しています。自分のやりたいことがバランスよく取り組めることによって、研究の意欲・効率向上につながっていくのではないかと考えています
博士進学、研究者のキャリアへの不安とどのように向き合っているか
研究者のキャリアを検討するにあたり、大学/民間企業などの研究者の方々からお話を伺ったり、書籍、ニュース、コラムなどを読んだりして、研究者の魅力がある反面、不安点が明確になってきました。私の場合、「資金」と「研究と家庭との両立」に不安があることがわかりました。まず、「資金」については、実家がそれほど裕福ではないため、如何にして学費/生活費を捻出するかが問題でした。経済的な支援について調べたところ、博士課程在学中は、RAや学内の給付奨学金によって、最低限の生活を送ることができるということがわかりました。次に、「研究と家庭との両立」については、立命館大学内に保育園が開設されたことにより、少なくとも待機児童問題で悩むことはなく、その点については安心しました。しかし、在学中の経済的不安は完全に払拭できたわけでなく、また博士学位取得後も安定した雇用が得られない可能性があり、不安な面も多いと感じています。更に、キャリアが安定してくる頃には出産に高リスクを伴う年齢と重なり、女性ならではの問題もあることに気付きました。このように先行きが不透明ではあっても、やはり研究を続けたいという意思に変わりありません。自分がやりたいことは何かと自問自答すると、研究することに対し、わくわくしている自分がいました。研究することにより、人々の健康の手助けをすることができれば嬉しく思います。
研究者の経済支援制度が改善されつつありますし、性別に左右されず研究が続けられるよう制度/環境の改善に働きかけてくださっている方々もいらっしゃいます。私は、将来、家庭をもちながら研究し続けたいと考えています。現在のように、自分のやりたいことをバランスよく取り組み、幸福な生活を送ることができるよう努力します。
※1 超創人財育成プログラム:産学融合によりアクティブライフ社会(年齢、性別、障がいの有無に関わらず全ての人が生活の質を向上させ、豊かな人生を送ることができる社会)を超創する5年一貫制の立命館大学の人財育成プログラム。
URL:http://www.ritsumei.ac.jp/gr/aldp/