【東海・北陸ブロック】あっという間に還暦(2022年3月22日掲載) 音声読み上げ
岐阜大学 副学長(多様性、人権、図書館担当)男女共同参画推進室長・教授 大藪 千穂
のんびりし過ぎた大学院生時代
博士課程を卒業して岐阜大学に32歳で勤務して28年になります。大学院は大阪市立大学(2022年4月から大阪公立大学に名称変更)ですが、実家の京都から週2日ほど、講義のある時しか大学には行かず、呑気な大学院生活を送っていました。大学院生は一人で、講座制だったので担当の教授や助教授にコーヒーを持っていっては話をしたり、ゼミの帰りには先生と食事をしながら研究の話を聞いたり、留学したりと楽しくのんびり過ごしていたら、ある日、「大藪君、僕、もうすぐ退職するで!」と言われてびっくりしました。慌てましたが、博士論文は到底間に合わず。助教授だった先生に指導教官になってもらいましたが、またのんびりしていたらあっという間に上限の6年が来てしまいました。6年目の夏、岐阜大学の公募が机の上に置いてあったので、面接に行きました。おいしそうな和菓子を出していただきましたが、6名ほどの先生に囲まれいろいろ質問される中、とってもじゃないですが、頂くことはできませんでした。
岐阜大学に就職
お菓子は食べられませんでしたが、無事岐阜大学教育学部家政教育講座の助教授として就職できました。それまで非常勤は二つほどしていましたが3月まで学生だったので、戸惑うことばかりでしたが、学生がとてもやさしく、かなり助けてもらいました。
博士論文は就職してからも終わらず、何とか就職1年目の9月に修了できました。論文は、人間の消費力を測る「消費単位」の算定という研究で家計行動を分析していました。小さい時から買い物が大好きで、今も家計簿をつけるのが至福の時です。「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったものですね。
大学では、家庭経済学、家庭経営学、家族関係学、消費者問題等の講義を受け持っています。家族関係学は、現在の男女共同参画の仕事に役立っています。お金の研究は、金融経済教育として続けており、一人で出来るスマホ版「人生設計ゲーム」や高齢期準備のための「エンディング・プランニング・ゲーム」、「小学生用のおこづかいちょう」を開発し、児童・生徒・学生・一般の人に実践し、それらの教育効果を分析しています。今でもお金や論文が増えていくのを見るのが好きですが、お金は無くなってしまうことがあります。その点、論文は無くならないのでありがたいですが、ただ変な論文を書いたらずっと残るので気を付ける必要があります。
ライフワークの発見
就職して少し経つと、経済に関心はあるけれど、お金だけでは幸せになれない・・・・とも感じ始めていました。ちょうどバブル時代に学生時代を過ごしたことも関係しているかもしれません。隣の研究室の杉原利治先生とそのような話をしていた時に、アメリカに居住しているアーミッシュ(Amish)という、今でもニューヨークのすぐ近くで電気も使わず馬車を用いた300年来の生活をしている人々のことを教えてもらったことで、家計分析に加えて、アーミッシュのライフスタイルから現代社会のライフスタイルを考える研究もライフワークになりました。
岐阜大学でのワークとライフ
私は今のところ?独身なので、ワークとライフはほぼイコールです。研究内容は趣味の延長なので楽しく過ごしています。また講義や学生との語らいも楽しく、毎日小学生のように大学に行くのが好きで、朝が待ち遠しかったりします。家政教育講座なのでランチは学生と作ってコロナになるまでは毎日一緒に食べていました。お三時もゼミ生とお菓子を食べ、時々夕食も一緒に食べ、たわいない話から色々なアイデアがでてきたりしました。これまでは学生の面倒をよく見ていると自負していましたが、コロナになって、実は学生に面倒を見てもらっていたのだということに初めて気づかされました。定年まであと5年。楽しく過ごしていきたいです。