【北海道ブロック】息子が教えてくれた私の「ワークライフマネジメント」(2024年11月12日掲載) 音声読み上げなし
北見工業大学 工学部 地域国際系 助教 片岡 沙都紀
私には5歳の息子がおります。本コラムでは、やはり息子なしでは語れない私のワークライフマネジメントについて述べさせていただきます。
私は2023年4月に現職の北見工業大学に着任いたしましたが、それまでは関西の大学で10年ほど研究生活を送っておりました。私の専門分野は地盤工学で、子供ができるまでは朝早くに大学に行き、夜遅くまで実験や現場に出て一日を過ごすような日々を送っておりました。それこそ家には、帰って寝るだけといった昭和のお父さん(?)みたいな生活でした。よく主人に捨てられなかったなぁと思います(笑)。そんな私が子供を妊娠したことを知った時は、本当に嬉しかった半面、高齢出産となることもあり、「この先どうなるんだろう?」という不安な気持ち半分といったところでした。妊娠中は最初こそ悪阻に悩まされた時期もありましたが、大きな体調不良もなく、産休まで行きつくことができました。産休前、「この仕事は何時までかかっても終わらせなければ」とちょっとでも無理しようと思った時などは、お腹の中の息子によく蹴られていました。今考えると息子はこの時から、私のワークとライフのバランスをコントロールしてくれていたのだと思います。
産休前は無難に生活していた私でしたが、産休に入ってからは体へのダメージが重なり、予定日よりも早く出産を迎えることとなりました。出産で体がボロボロになりながらも、その頃の私は「出産したんだから極力早く復職しなければ」などとかなり安易に考えていました。当初は産後6か月での復職を希望していましたが、息子が産まれたのとほぼ同時期に始まった新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて保育所探しがかなり難航し、結局は生後10か月での復職となりました。ただ復職したものの、どこのご家庭でも一緒だとは聞いていますが、保育園に入ってから最初の2か月は、息子の体調不良などで保育園からの電話が後を絶たず、そのたびに実験を中断してのお迎えの日々でした。主人も家事育児には積極的に参加してくれていたのですが、そんな毎日を繰り返すうちに、私の中で「研究室の学生や先生がたに迷惑をかけている」と焦りの気持ちが重く圧し掛かってしまいました。ただ、そんな私を察してくれていたのか、研究室の学生たちは、大学院生を中心に「自分たちで出来ることは自分たちで実行する」として、彼らの中で研究の優先順位を考えてくれるようになりました。また、実験で困ったことがあったら関連する研究チーム内だけではなく、研究室全体で考えることが出来るようになっていました。当時はコロナ禍の真っただ中ではありましたが、研究室内での学生同士の結束が強くなったようです。先日、当時の院生たちと集まる機会があったのですが、「あの頃の自分たちには、どの研究室にも負けない結束力がありましたよ」と言っていた時は、本当に感慨深くなりました。
さて、我が家の中でもそんな母の様子を知ってか、あれだけ体調を崩し早退の日々を繰り返していた息子は徐々に保育園生活にも慣れ、1歳を超えた頃には滅多に風邪一つ引かない元気な子に育ってくれました。そうなりますと、保育園からの呼び出しも激減し、私も心に少し余裕が出来ました。私はこのタイミングで、仕事と育児を上手くまわしていくためにはどうしたらいいかを真剣に考え直しました。そして行き着いた結論は、仕事も育児も「ダラダラしない」。一日単位で仕事や家事にかけられる時間を見直すと同時に、常に「優先順位」を考えるようにしました。ダラダラしないなんて極めて当たり前のことですが、仕事と私生活の境界線がほとんどなかった私にとって、この思考により仕事のメリハリがつき、全ての作業効率をあげることができたと実感しています。また、メリハリがつくと必然的に家事&育児に専念する時間がとれるようになり、息子と向き合える時間が増えました。
これから息子が成長していくたびに、私のワークライフマネジメントも見直しが必要になるでしょうが、周りの助けも借りながらその時々の自分に合ったスタイルを構築していければと思っています。