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【東海・北陸ブロック】幸せな協働:子育て、仕事、そして自己実現を支えるパートナーシップ(2025年2月25日掲載) 音声読み上げ


富山県立大学 工学部 教養教育センター 特別任用講師 リ オリガ

グローバル化が進む現代社会において、「働く」「育てる」という人類の重要な営みは、もはや性別で区分けできるものではありません。私はロシアで生まれ育ち、現在は富山県立大学の教員として、文化や価値観の違いを超えた普遍的な「協働」の大切さを日々実感しています。

私は2000年に文部科学省の国費留学生として来日し、2004年に富山大学で修士課程を修了しました。それ以前は、ロシアで国際関係論を学び、その頃から既存の性別による役割分担に疑問を持っていました。「女性は子育てと家事を担当するもの」という自身の母の価値観に反発し、「結婚相手とは同等のパートナーでなければならない」と主張していたことを今でも鮮明に覚えています。

その信念は、日本人の男性との出会いで現実のものとなりました。結婚後は共に起業をし、現在は4人の子どもに恵まれ(19歳、16歳、14歳、12歳)、6人家族となり、まさに夫と理想の二人三脚の生活を送っています。家事や育児は互いの得意分野を活かしながら分担し、夫の方が多くの負担を担ってくれることもあります。

私たち夫婦のこうした姿勢は、子どもたちの成長にも自然な形で影響を与えているようです。息子も娘も、性別に関係なく、それぞれの得意分野を活かして家事を手伝ってくれます。料理が好きな娘は夕食の準備を担当したり、部屋の片付けが得意な息子は家族の整理整頓をサポートしたりしています。また、年長の子どもたちは下の子の勉強や進学のアドバイスをするなど、家族それぞれが自分にできることを考え、実践しています。こうした日常の中で、子どもたちは自然と「家庭を支えることに性別は関係ない」という価値観を育んでいるように感じます。

民間の英会話教室運営の経験を経て、現在は大学教員として教壇に立っています。理論に基づいた、現代に即した英語教育を提供したいという思いが、この転身の原動力となりました。社会人としての経験や子育ての体験は、教育現場での学生との関わりや研究活動に活かされています。

特に、若い世代との対話を通じて彼らの可能性の大きさを感じています。これから日本を担う学生たちには、既存の枠組みにとらわれることなく、自信を持って活躍してほしいと願っています。そのため、地域連携プロジェクトなど、実践的な学びの機会創出にも力を入れています。

最近よく耳にする「女性は仕事と子育ての両立ができる時代」という言葉。しかし、この表現自体に違和感を覚えます。なぜ「女性」という言葉が必要なのでしょうか。仕事も家庭も、性別に関係なく、一人の人間として向き合うべき課題ではないでしょうか。

理想的なワークライフバランスは、人それぞれ異なります。私の場合、お互いを理解し合い、支え合えるパートナーの存在が大切です。そして、自分らしい生き方を選択できる社会の実現に向けて、教育者として、また一人の人間として、できることを積み重ねていきたいと考えています。

人生の岐路に立つとき、慣習や固定観念に縛られることなく、自分の信念に従って道を選ぶ勇気。それは、私が学生たちに伝えたい最も大切なメッセージでもあります。性別や国籍、文化的背景に関係なく、一人一人が自分らしく輝ける社会の実現に向けて、これからも教育者として、そして一人の人間として、できることを積み重ねていきたいと考えています。


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