【中国・四国ブロック】研究と子育て(2026年1月19日掲載) 音声読み上げなし
愛媛大学大学院農学研究科 生物環境学専攻森林資源学コース 准教授 鍋嶋 絵里
関東から愛媛に来てもうすぐ13年になりますが、来てすぐに、学会のダイバーシティの集まりで話してほしいと言われたことがありました。タイトルは「研究と子育てとの両立..?」というものだったのですが、今もその感じ(?がつく)は変わりません。それでも、体験の一つとして何かの参考になればと思い、自分自身の体験を少しご紹介します。
現在、17歳と7歳の息子が2人います。長男を出産した頃は、大学のプロジェクトとしての女性研究者支援の仕事についていました。研究職ではなく、勤務中は女性教員の支援、講演会の立ち上げ、学内の環境整備などに携わっていました。勤務後の夕方以降は、同大学でポスドクを考えていた先生の研究室にお世話になり、研究を継続するという生活でした。この職の期限が3年だったのですが、その間に結婚、出産とライフイベントも経験しました。
その後、出産の少し後に母が亡くなり、心身ともに落ち込んでいたことから、3年の期限で一旦は仕事をやめました。1年半は子育てに専念したのですが、研究には心残り、やり残した感じがありました。特に、前職の間にツリークライミング(ロープを使った木登り)での研究を手伝った経験が大きかったかもしれません。もともと大学時代に山登りをしていて、森林や樹木が好きだったのですが、自然の中で大きな樹木と対峙すること、木登りをして地面から数十mの高さでそれらの樹木について調べること、その非日常性が忘れられなかったように思います。
お世話になっていた先生や上司からは、継続や復帰を勧めていただいていました。それで、育児に専念してほどなくした頃、日本学術振興会特別研究員のRPDに応募しました。Rはrestartで、私が応募する数年前から始まった制度だったと思います。RPD経験者の先輩方に色々と情報をいただき、無事通ることができたのですが、この制度のおかげで研究に戻ることができたのだなと今思い返すと本当にありがたいです。
研究は、森林の樹木を対象としたフィールドワークでした。しかし、この頃は近場にはフィールドはなく、電車で数時間かけて移動し、日帰りでサンプリングをするといったスタイルでした。これだと、保育園に預けている間になんとか行うことができます。時々は、遠出をし、宿泊を伴って県外でのサンプリングを行うこともありました。その場合は、子どもを同伴し、一緒に来ている学生さんに遊んでもらったり、出先で親戚に預けるなど、いろんな方面でお世話にもなりました。
この頃からずっと、環境には本当に恵まれていたと思います。子育てしながらだと仕事上迷惑をかけることもありますが(急に熱が出たり、行事があったりなど)、周囲の理解や助けがいつもありました。また、愛媛には親戚がいたことから親戚の助けも大きかったと思います。次男の時には、市のサポート制度などを利用したりもしました。夫は東京を中心に全国転勤で、夫の育休中(後述)を除いては基本的にワンオペでしたし、助けを自分から求めることは、子どものため自分のために本当に大事だと思います。
長男と次男は10歳差、この10年の間に変化を感じたことはいくつかありますが、一番大きかったのは、次男が1歳の時に夫が8ヶ月育休をとったことではないかと思います。社会的に男性の育休が大きく推進され始めた頃でしたし、40代で年齢的にも取りやすかったようです。とはいえ、長男の頃には夫も私も考えもつかなかったことでしたので、10年間での社会的な変化は大きかったのかなと思います。
本当に、社会的には子育てと研究との両立に向けて良い方向に向かっていると思います。私自身は最初からずっと恩恵を受けている世代と言えるかもしれません。それでも、子育てに関してはケースバイケースです。私自身も大学のセンターやその時のセンター長の先生に相談して助けていただいたことがありますし、声を上げていくことは大事だと思います。そうやって一人でも多くの女性研究者が、子育てをしながらも研究に邁進できることを願ってやみません。
全国ダイバーシティネットワーク