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2019年11月17日 学術フォーラム
(当日資料を掲載しました) 音声読み上げ


2019年11月17日(日)に日本学術会議において、日本学術会議と全国ダイバーシティネットワークの共同主催により学術フォーラム「学術の未来とジェンダー平等~大学・学協会の男女共同参画推進を目指して~」を開催し、大学・研究機関関係者を中心に、約130名の参加がありました。

フォーラム開会に先立ち、登壇者と今井絵理子内閣府大臣政務官、角田喜彦文部科学省科学技術・学術総括官との懇談会が開催され、登壇者からそれぞれの取組や課題の紹介があり、男女共同参画の推進に関して率直な意見交換の場となりました。

開会にあたり、藤井良一情報・システム研究機構長、山極壽一日本学術会議会長・京都大学総長(ビデオ出演)に続き、西尾章治郎大阪大学総長が、全国ダイバーシティネットワーク総括責任者としてご挨拶いたしました。

       フォーラムの様子

第Ⅰ部「大学・研究機関における男女共同参画の現状と課題」では、全国ダイバーシティネットワークに関して5件の報告、ならびに取組事例集の紹介も行いました。
 報告1 「全国ダイバーシティネットワークの活動」
      工藤眞由美(全国ダイバーシティネットワーク実施責任者、
      大阪大学理事・副学長)資料
 報告2 「企業が求める女性人材と企業のダイバーシティの取り組みからの学び」
      塚原月子(㈱カレイディスト代表取締役、
      全国ダイバーシティネットワークコーディネータ)資料
 報告3 グッド・プラクティス紹介~大学における男女共同参画の取り組み~
     「岩手大学におけるダイバーシティ推進の取組」
      宮本ともみ(岩手大学副学長・男女共同参画推進室長)資料
     「ジェンダー主流化のシステム改革」  
      田間泰子(大阪府立大学人間社会システム科学研究科副研究科長、
      前・支援事業実施責任者)資料
     「女性研究者積極採用施策の実施」
      田中弘美(立命館大学学長特別補佐、情報理工学部特命教授)
      資料

第Ⅱ部「研究力強化のための男女共同参画~学協会の取り組みから~」では下記の報告がありました。
 報告1 「男女共同参画学協会連絡会(理工系)の取り組み」
      熊谷日登美(日本大学生物資源科学部教授)
 報告2 「GEAHSS–人文社会科学系学協会をジェンダー平等でつなぐ試み」
      井野瀬久美惠(GEAHSS初代委員長、甲南大学教授)
 報告3 「医学系学協会」
      名越澄子(埼玉医科大学総合医療センター教授)
 報告4 「七転び八起きしてつなぐ私の研究生活」
      丸山美帆子(大阪大学工学研究科・日本学術振興会特別研究員(RPD)、
      京都府立大学生命環境科学研究科特任講師)

続いて、「女性学長が語る大学の未来~男女共同参画の視点から~」として、3名の女性学長による座談会が行われました。
   髙橋裕子(津田塾大学学長)
   田中優子(法政大学総長)
   林佳世子(東京外国語大学学長)

第Ⅲ部「座談会(フロアとの討論)~学術におけるジェンダー平等の推進~何が必要か?」では、登壇者をパネリストとして、フォーラムの前半で寄せられた出席者からの質問に回答する形で意見交換が行われました。

フォーラム全体を通じて、サステイナブルな組織、社会を実現するには、女性の活躍が不可欠であること、また、女性の活躍を促進するには、早い段階から女性のリーダーを養成し、男性を巻き込むことで意識改革を行うことが重要であること、加えて、ダイバーシティ、ジェンダー平等が学術研究の向上につながることをエビデンスベースで可視化すること、ネットワークにより取組を共有することが必要であることなどが共有されました。
最後に、LGBT等を含むダイバーシティ推進が重要であることの指摘があり、女性活躍に特化したポジティブアクションに対する批判の声もあるものの、ジェンダー平等が実現されていない現状では、一定の水準に達するまでは、積極的な支援が必要であることなどが確認されました。

<登壇者からのメッセージ>

    • 大阪大学工学研究科・日本学術振興会特別研究員(RPD)、京都府立大学生命環境科学研究科特任講師

    • 丸山美帆子


    • 2019年11月17日、日本学術会議・全国ダイバーシティネットワーク主催で行われた学術フォーラム『学術の未来とジェンダー平等〜大学・学協会の男女共同参画推進を目指して〜』に参加して参りました。今回は、ご縁あって、聴衆としてではなく登壇者の一人として第Ⅱ部にて若手研究者として報告をさせていただき、第Ⅲ部のフロアを巻き込んだ座談会においては僭越ながらパネリストの一人として登壇させていただきました。

    • 「私なんかが・・・いいのですか?」

    • これが、最初にお話をいただいた時のストレートな感想です。私は今、3回目の出産を経て、大中小の子供達(大とは言ってもまだ小学生)の育児に奮闘中です。紆余曲折あった3回目の出産ですが、それを乗り越えて2018年より日本学術振興会特別研究員(RPD)として現場に戻って1年と半が経ったところでした。そのような状況の私にとって、正直なところ大きすぎるお話でもありました。また、若手という響きにそろそろ入らなくなる頃かしら?とも密かに思っていました。今までやったことが無い話が目の前に来ると、大体いつでも

    • 「自分なんて、まだまだそんなことできません。まだ力と準備が足りていません。」

    • という感情が頭をもたげます。これは誰にもあることだと思います。しかし、その気持ちで遠慮したり躊躇したりすることは、大きなチャンスを逃すことにつながります。根底にあるのは、失敗したり、立場をわきまえろと言われたりすることへの恐怖だと思いますが、一歩下がるは美徳ではないと考え、お話をくださった方々に感謝をし、今ある等身大の私で全力を持って挑戦することに決めました。


    • 当日は、シンポジウム開始前に今井絵理子政務官との懇談の機会もありました。3分という貴重な時間をいただいた中で私が伝えたかったことは、特にパーマネント職に就く前の若手ポスドクが安心して妊娠・出産ができるような仕組みが必要であるということでした。ポスドクは年限付きのプロジェクトで雇用されることがほとんどですから、その期間使命感を持って研究をしなければなりません。当然本人も、駆け出しの研究者として全力投球の構えです。一方で、年齢的にこの時期にパートナーと出会い、新しい命を授かる人も少なくありません。『研究者としてこうあるべき(ありたい)』という気持ちと、『母として子供を守りたい』という気持ちは両立させることが難しく、自己の中に大きな矛盾を抱えることになります。年限付きプロジェクトですから人が一人欠ければ影響も大きいため、無責任であるという評価や、周囲の人たちの心ない言葉に苦しむ人も多いでしょう。そのような背景の中、定まった組織に継続的に所属できないため、妊娠・出産で他業種の方が得ている保障が得られないことが多いのが現状です。私は、研究は人生をかけて携わる魅力ある仕事だと思っていますが、この若手時期に立ちはだかる巨大な壁は、巨大すぎて先が見えない最も厄介なものと認識しています。せっかくの素晴らしい仕事を諦め、別の方向に向かっていく若手女性研究者が後を絶たない理由には、現状では残念ながらうなずけてしまいます。この状況を変えていかねばならないということをお伝えし、最後には「この壁を超えた先に行ければ、研究は最高に楽しい!」ということで締めさせていただきました。


    • 本会議は、圧倒されました。各大学にてリーダーシップを発揮されている錚々たる先生方が、女性躍進の必要性をデータに基づいてご講演されたり、各大学の取組をご紹介されました。ものすごい熱とパワーにあふれていたように思います。

    • 「あぁ、ここが、『変えていく』の最前線なのだな。」

    • と現地で思いました。一方で、先生方のご講演の中には、

    • 「変わったとは言ってもまだまだこれしか変わっていない。」

    • というお言葉もありました。

    • そうなのです。思い返してみれば、日本学術振興会の特別研究員(RPD)も、先を歩まれていた先生方のご活動の結果作られた制度です。私が泣き寝入りせずに、現場復帰を願ってこの制度に挑戦できたのは、道を切り拓いてくださった先生方のおかげです。こみ上げるものがありました。一方で、まだ変われていないこともたくさんあります。私たちにできるのは、未来に続いていく後進たちが安心して道を歩んでいけるよう、自分が通り過ぎた悪路を整えることなのだと改めて実感しました。


    • 先に述べましたとおり、多くの若手研究者は任期付きのポスドクとして研究機関を転々とします。つまり、一般の会社と違って組織だってシステムを変えていく力はアカデミックでは非常に弱いということです。だからこそ、日本全国の大学がつながり、横のつながりを作っていくことが必須です。ここに自分の立場としてもう一つ付け加えるのであれば、世代を超えたつながりをしっかりと構築することだと思うのです。若手研究者だから、ポスドクだから、学生だからと言って思っていることを伝えられなかったら、自分が思い描く未来は妄想で終わってしまいます。力強く道を切り拓き、変える力を動かしてくださっている先生方に、私たちは自分たちが直面している問題やリアルボイスを届けなければならないと思いました。

    • 『臆さず思うことを伝える。』

    これには大変な覚悟が必要と思いますが、私はこれをカウンセリングという手法で克服しつつあります。自分の心の弱さを克服し、その一言を思い切って発することで、違った枝葉が伸び、可能性が広がります。自分の共同研究でも、今回のシンポジウムでも実感しています。心の元気が全ての始まりです。今回のフォーラムに参加させていただき、改めて、今自分たちが成すべきことが見えました。


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